イライラを人にぶつける日本人 根源を知ればコントロールできる

帆足 日本では、イライラを抱えた人が弱者につらく当たるという人間関係の構図が人生の各時期にあります。子ども虐待、いじめ、DV、高齢者虐待は皆そうです。家庭でもそうで、子どもがイライラをぶつけ合う親を見て育つと、子どももイライラを親にぶつけるようになり、結婚後はパートナーや子どもにつらく当たるようになります。自分のイライラを人にぶつけるという気持ちの解消法を変えていかなければ、日本は幸せな国にならないでしょう

 でも、今のコロナの状況でイライラするなと言うのは無理です。するだけの理由があるのだから、イライラしてしまう自分がダメとか、悪い人間だと思う必要はありません。

 学校でも家庭でも「イライラしてはいけない、仲良くしないといけない」と、イライラは悪いもののように教えます。イライラを抑える方向で教えられることが多く、コントロールする方法はあまり教えてきませんでした。でも、イライラは人生の中で必ず起きます。イライラすることにも意味があるからです。イライラをコントロールする方法を知ることが大切なのです。

 イライラの原因かが何か分かれば、自分でコントロールできます。私が提案したいのはこのコロナ禍を、「どうやったらイライラを人にぶつけないで自分で処理できるかな」という解消法を見つける機会にすることです。それが見つかったら、コロナが収束した後の自分の人生にもプラスの影響があるはずです。

犬山 私自身もイライラを夫にぶつけてしまうことがあり悩んでいて、カウンセラーに相談したところ、根源には夫に甘えたい気持ちがあると言われて、ふに落ちたんです。それからは、イライラしそうだなと思ったら、先手を打って夫に甘えに行くという対処法を見つけました。でも、それはカウンセラーの力を借りたからできたということがあります。日本ではまだカウンセリングを受けるというのは一般的ではないので、自分の力でイライラの対処法を見つけるにはどうしたらいいのか教えてください。

帆足 例えば、自分を客観的に見ることがお勧めです。寝る前に、その日にイライラしたことを書いてみる。パートナーとケンカしてイライラしたら、その原因や、どうしてほしかったのか、自分はそのときどうしたらよかったのかを書いておきます。それを1週間くらい続けて、読み返すと、自分がどういうときにイライラするのか、分かってきます。

 あるいは、寝る前に、今日良かったことと、ダメだったことを必ず5つずつ書き出してみるのもよいでしょう。やはり1週間くらい続けると、自分の気持ちの流れや対応のパターンが見えてきます。すると、自分はどうするとうまくいくのか、いかないのか、どんなときにどうしてほしいのかが分かってきます。

 犬山さんのように、イライラの根源はパートナーに甘えたいのに、相手が察知しないことというのもあるでしょう。イライラして怒ってしまうのは、相手にこうしてほしいという期待があって、その期待が裏切られたときのことが多いように思います。

 どうしてほしいのか、ありのままの素直な気持ちを相手に伝えるのもよいですし、犬山さんのように、自分の中で整理をしてイライラする前に相手に甘えてしまおうというのもいい方法だと思います。

 人間は完璧ではないので、イライラの原因が分かった後も失敗することはあると思います。パートナーや子どもにイライラをぶつけてしまったら「ごめん、ママ/パパは今失敗した、次は頑張るからね」と謝りましょう。子どもはそういう親を見ていると、誰かが失敗しても許してあげられる子どもになります。失敗しても終わりではなく、次に機会があるということも学びます。巣ごもり生活で、家族が密着しているからこそ、お互いのコミュニケーションのパターンがよく見えて、子どもだけではなく家族みんなが関わり方を学ぶ機会をたくさんつくっていけるメリットがあると思います。

犬山 人それぞれに行動と気持ちのパターンがありますよね。私も自分はどんなときにイライラするのか記録したことがあります。私は空腹かつ時間がなくてバタバタしているときにもイライラすることが分かって、イライラする前にとりあえず口に何かいれたり、「相手を責めないように」と注意したりしながら対処しています。