パートナーは他人と思うとぶつかることが減らせる

犬山 テレワークと休校、休園で家事・育児のバランスが夫婦のどちらかに片寄って、家庭内に不和が生じているという声もよく聞きます。仕事中のはずなのに相手がダラダラしているように見えたり、自分ばかり負担が大きいように感じて、ケンカが多くなってしまったりする場合、パートナーとの関係を改善するにはどうしたらよいでしょうか。上手なコミュニケーションの取り方を知りたいです。

帆足 夫婦のコミュニケーションは、「パートナーはそもそも他人だ」というところからスタートするとよいでしょう。例えば、パートナーに言ってしまったことを他人にも言えるでしょうか? 「これは他人には遠慮してできないことだ。それなら、パートナーも他人だからやめておこう」と考えると抑えが効き、ギスギスしにくくなると思います。

 アメリカの作家カート・ヴォネガットの小説に「愛をちょっぴり少なめに、ありふれた親切をちょっぴり多めに」という言葉があります(『スラップスティック または、もう孤独じゃない!』/早川書房)。どういうことかというと、結婚生活では、得てして「私たちは愛があるパートナーとして結びついている対等な立場。責務も対等にしてほしい」というような要求が多くなってしまいます。愛は必要だけれど少なめがいい。それよりは、親切にすること(パートナーに対して寛容で、尊重すること)を意識したほうが、夫婦円満に暮らせるということです。

犬山 「愛があるから育児も家事もやって当然。言わなくても伝わるだろう」ではなく、他人であるということを前提に、冷静に要望を伝えるということが大切ですね。それに、どちらの親も子どもに対しては対等に責任がありますので、子育て関わる要望は「愛」というより「権利」として大切にしても良いことなのかなと思います。

帆足 そうですね。コロナ禍の今も、お互いに親切をちょっぴり多めにという気持ちを持って暮らせば、ぶつかることが減って、一生一緒にいられるかもしれません。ただし、一緒にいたくないと思えば、一緒にいる必要もないですよ。

犬山 笑顔が消えて追い詰められながら一緒にいるのは、家族全員にとってよくないですものね。