コロナ自粛の下、家で子どもを見ながら、仕事をし、家事もしている親たち。自分の時間が取れず、疲れやストレスはたまっていませんか? イライラして怒鳴ってしまうなど、子どもとの関係に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。犬山紙子さんが公認心理師で「親と子どもの臨床支援センター」代表理事の帆足暁子さんに、コロナ禍での子育てや親のメンタルケアについて話を聞きました。前編の今回は、子育ての悩みの解消法や虐待しそうになったときにどうしたらいいかがテーマです。

【犬山紙子さん×公認心理士・帆足暁子さん対談】
(前編)コロナ禍の子育て 虐待が不安な親に必要な言葉とは ←今回はココ
(後編)イライラはコントロールできる 記録して根源知ろう

子どもにコロナをどう伝える?

犬山さん(以下、敬称略) 新型コロナウイルス感染拡大にともなう巣ごもり生活が続いています。3歳の娘がいるのですが、自粛生活で保育園にも行けず、友達と遊ばせてあげられない日々です。新型コロナウイルスの感染拡大とその予防のための生活について、子どもにどんなふうに説明したらよいのでしょうか

帆足さん(以下、敬称略) 私は新型コロナウイルスについては、どの年齢の子どもでも、詳細に説明する必要はないと思います。命に関わるなどの情報を与えて無用の恐れを抱かせるほうが、後々子どもの心に残ってしまうからです。

 教える必要があるのは、感染を予防し、広げないために必要な正しい情報とノウハウです。「今、インフルエンザみたいな風邪がはやっているの。だから、家族以外の人と会わないほうがいいんだよ。お外ではマスクをして人とくっつかないようにして、手を洗うときは石けんで30数えるまでは洗ってから流そうね」と、できることを簡潔に伝えるほうが大事です。

 伝え方は年齢によって変えていき、3歳なら一緒に洗ったほうがいいですし、5歳なら見ていてあげればいいでしょう。

犬山 確かに手洗いは、私も娘と一緒にやっています。子どもに説明をしても「友達に会いたい」とワーッと感情を出したときはどんな接しほうがよいですか。

帆足 今、それを聞いただけで悲しくなってしまいました。お子さんは会いたくて泣いてしまうくらいの友達に出会い、絆をつくれているのですね。そのお子さんの思いごと、ぎゅっと抱きしめて「会いたいよね。きっと、○○ちゃん(友達)もあなたに会いたいと思っているよ。でも、今は皆ダメなの。コロナが終わったら会いに行こうね」と説明してあげましょう。もちろん、手紙や電話、ビデオ通話はOKなので、いろいろなツールを使って、お友達との接点をつくってあげることも大事です

犬山 スキンシップを取りながら、子どもに共感してあげるのがいいのですね。オンラインもフル活用したいと思います。

編集部(以下、ーー) 休校が続いている小学生にはどんなふうに話したらよいでしょうか? 連休明けで再開すると思っていたら、また休校が続いてしまい、子どもにとっては先の見通しが不安定な生活が続いています。

帆足 大人たちは4月の終わりごろには、5月になっても自粛が続きそうだなと予測していましたよね。しかし子どもたちは休校はゴールデンウイークが終わるまでと聞かされていたから、それを信じて自粛を頑張っていたわけです。それが、連休が終わる頃になって延長が発表された。大人は「やっぱり」と思ったかもしれませんが、子どもにとっては、信じて我慢してきたのに裏切られた感じだったと思います。

 そのため、子どもたちは大人に対してやりきれない気持ちを抱えているでしょう。そのモヤモヤを解消してあげるには、ここは一つ、行政に悪者になってもらい、身近な大人、つまり親が一緒に怒るのがいいでしょう。子どもから「もうやだ!」「嘘つき!」と言われたら親も怒りたいのですから。「本当にひどいよね。私たちはこんなに我慢しているのに、何を考えているんだろうね」と。不思議なもので、人間って共通の悪者がいると団結するんです。子どもは「裏切られたのは子どもだけではない、親もそうなのだ」と親と団結でき、モヤモヤした気持ちも解消されます。

 親が先に怒ってしまうのもいいと思います。すると先を越された子どもはあぜんとして、自分が怒りたいのも忘れて「大丈夫だよ、ママ/パパ」と慰めてくれます。大人を慰めて役に立てるなんて、子どもにはそうそうないチャンス。これは子どもの成長となる貴重な機会です。

犬山 普段から子どもに大人の役割を背負わせるのは避けたほうがいいと思いますが、自粛生活の中に子どもが少し大人になるきっかけがあると思えばいいんですね。大人が先に怒ってしまうことで、大人は完璧ではないという面を見せることもできますね

帆足 確かに大人が子どもを守る立場でいることは大切です。でも、もともと完璧な大人なんていないのです。コロナに関しては大人も分からないことが多い。だから、子どもと同じように不安や不満、怒りも感じます。ときには、人間同士、大人にも子どもと同じようにさまざまな気持ちがあるという体験や、大人を慰める体験もよいと思いますよ。

犬山 今は親子共にストレスがたまっています。子どもが言うことを聞かなくて、つらいときはどうしたらいいでしょうか。