不安なニュースに接し続けると正常な判断がしにくくなる

 こういうときこそ冷静でいなければいけないのに、冷静でいるのが難しい状況です。不安になるニュースを浴び続けると、どんなに理性的な人も軽く洗脳されたような状態に陥り、視野が狭くなって、正常な判断が難しくなるからです。実際、トイレットペーパーから食料品までが買い占められるということも起きています。でもこういうときこそ正常な判断が一番必要とされているわけで。

バイアスをかけずにファクトを見よう

 私たち一人一人が冷静でいるためには、自分が今「不安過多に陥ってしまっている」のではという可能性を考えてみること、他に目を向けるべきことに意識を割くこと、そしてファクトとエビデンスを見る力を付けることだと思っています

 「ファクト」の見方ですが、これは『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング他/日経BP)という本に書かれてあることが参考になりました。本では、どんなに学歴が高くても、賢い人でもバイアスのせいで事実をねじ曲げて考えてしまうということが指摘されています。そのバイアスがどのようなものなのか、どうやったら事実を事実そのままに受け取れるようになるのかも書かれています。

 人は放っておくと、大げさにドラマチック過ぎる世界の見方をしてしまうんです。例えば、今特に知っておきたいのは恐怖本能についてです。人は「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」のだそうです。必要なのは、恐怖と危険は違うと気が付くことです。恐怖本能を抑えるためには、リスクを正しく計算することが必要だといいます(リスクは危険度×頻度で計算されるそう)。しかし、私たちは恐ろしさのほうに気が取られてしまいます。

 その他、本によると「悪いニュースのほうが広まりやすい」というネガティブ本能もあります。世の中の問題は複雑なはずなのに、複雑なことよりもシンプルなものの見方に引かれてしまう単純化本能や、誰かを責めれば物事は解決すると思ってしまう犯人探し本能、そして焦り本能にも気を付けなければならないと、書かれてあります。私もニュース番組に出演する際などは、自分を冷静に保つために読み返すことが多いです。