近年注目されているのが、わが子に過剰な期待と負担をかけ、結果として子どもの心を傷つけてしまう、いわゆる「教育虐待」です。この連載では、子どもを思う、よい親だからこそしてしまう恐れのある「教育虐待」について、マンガを通して考えていきます。コーチングの専門家である菅原裕子さん(ハートフルコミュニケーション代表理事)の解説と併せてお読みください。

エピソードvol.10 子どもが自分で語る力を意識して育てよう

 子どもと話すときは「分かりやすい言葉で話さないといけない」。そんなふうに思っていませんか? いえいえ、子どもは意外と大人の言葉を分かっています。3歳くらいまでは配慮が必要ですが、4歳になったら、「子どもだから」の意識はやめて、大人と同じような話し方をしてあげましょう。

 すると、子どもは全部の言葉は分からなくても、分かる言葉をつなぎ合わせて、推測して、内容を理解していきます。どういう意味?と聞かれたら説明してあげてもかまいませんが、分からないままの言葉があっても「あのとき分からなかったけれど、こういうことだったのか」という体験を積み重ね、語彙や表現力、自分の気持ちを語る力を育んでいきます。

 教育虐待が起こる原因の1つに、親が子どもと自分の区別化ができていないということがあります。子どもが自分の一部だという気持ちが無意識にあり、子どもを自分の夢を実現する道具のように扱ってしまうのです。区別化ができていないと、子どもの夢を否定して、自分の思うような道へ誘導してしまったりします。マンガに出てくる夫婦も最初は子どもの夢に否定的ですね。

 親が自分と子どもを区別化できるかどうかは、親の成熟度にかかっています。自分がどのくらい成熟しているかを判断するのは簡単です。それは、「自分から会社の肩書や学歴、持っている資格など、すべてをはぎ取った後でも、私は幸せだと言えるだろうか」と自問してみることです。さて、いかがですか? (菅原さん)