皆さん、こんにちは。ジャーナリストの治部れんげです。普段、小4の息子とジェンダーに関する話をよくしています。最近、小1の娘も議論に参加したり、面白い問題提起をしたりするようになりました。今日は、そんなやり取りをご紹介します。

「だいたい、忙しいママは唐揚げ作る時間なんて、ないよね」

 わが家には小4の息子と小1の娘がいます。1学期が終わり、ひらがな、カタカナを覚え、漢字も始まったころ、娘がこんなことを言いました。

 「『忙しいママでも楽々作れるお弁当』っていうけど、これは、ラクラク作れないよね……」

 それは、リビングの本棚にあったお弁当本のタイトルでした。正式にはもう少し長いものです。様々なお弁当のメニューや作り方テクニック、容器の選び方、飾り付きの楊枝や海苔を使って可愛いお弁当を作るワザなどが書いてあります。

 3年前、娘が転園し、週に何回かお弁当を作るようになったときに読んでいました。私は自分ができそうな、つまり簡単なやり方で、ちょっと可愛くできるコツだけを拾い読みして実践していたので、娘に言われたのをきっかけに全体を端から読み直してみました。すると……、

 「ほら、これ、簡単じゃないでしょ」

 と娘が指さした先には、薄焼き卵に切れ目を入れてリボンの形を作る方法が書いてあります。

 「確かにこれは、ママには難しいなあ」

 私が答えると、娘は続けてこう言いました。

 「だいたい、忙しいママは唐揚げ作る時間なんて、ないよね」

 これには少し説明が必要です。うちの娘が園時代に希望するお弁当のメニューは決まって「鶏の唐揚げとおにぎり」。カボチャ煮と果物を加えれば栄養バランスが取れるので、考えずに済んで便利です。しかし、仕事で朝早い日は、前夜に下ごしらえしても、揚げ物する時間がない……。早起きする気力がない私は、

 「ごめん、ママ、今日、忙しいから、唐揚げはまた今度でいい?」

 と言って、揚げ物ではない主菜(野菜の肉巻き等)にしていました。このやり取りが頭に残っていた娘には、

 「忙しいママは唐揚げを作る時間がない」

 という法則が刷り込まれていたのです。一方、お弁当本には唐揚げのアレンジメニューがたくさん並んでいます。