娘には「ママは常に素敵なお弁当を作るべき」というジェンダー規範がない

 「これは“忙しいママ”が“ラクラク”作れるものではない」

 娘の指摘はもっともです。

 「すべてのママは常に素敵なお弁当を作るべきというジェンダー規範は、うちの娘にはないのだな」と思いました。このように考えてくれると、私としては気が楽です。「ママもお仕事している」ことを当然と受け止め「忙しいときにはできないこともある」と理解してくれていると、こちらが変な罪悪感を覚えずに済むからです。

 少しややこしくなりますが、ここでもう一つ大事なことがあると思います。それは、「忙しくても朝から唐揚げを作るのが苦にならないママもいる」ということです。ママにも色々な人がいますから、私みたいに「朝から揚げ物をするには、時間の余裕が必要」な人もいれば「早起きしてきっちりお弁当を作りたい」人もいるのです。

 ちなみに私は、20代、一人暮らしをしていたころ、家でほとんど料理をしませんでした。買ってきたものを、切ったり温めたりして並べるだけ。恥ずかしながら、揚げ物を作れるようになったのは、40歳を過ぎてからです。

 今でも夕食に天ぷらを揚げたりすると「今日はすごく頑張った!」という達成感があります。あくまで「自分基準」ですが、よくやった日には、声に出して自分を褒めると娘からは厳しい指摘があります。

 「ママも、若いころからちゃんと唐揚げ作る練習しておけばよかったよね」と。「ママだから料理が得意でなければいけない」ということはなくても「大人として自分が食べるものは作れたほうがいい」ことは多くの人が納得するでしょう。その意味で、私は“仕事人間”を卒業し、自分と子どもの食べ物を準備するのが当たり前になって、よかったな、と思います。

 そんな話をしていたら、息子も加わってきました。息子は本のタイトルの言葉に着目しました。

 「まず“忙しい”っていうのが、何で忙しいのか、分からないじゃん。外の仕事で忙しい人もいれば、家事とか子どもの世話で忙しいかもしれないし」

 確かにそうだね。色々だよね……と言っていると、

 「まあ、僕のお弁当は結構、パパが作っていたから“ママ”だけじゃないけどね」

 と締めくくりました。