毎日、非常に暑い日が続いています。いかがお過ごしでしょうか。夏休みは、旅行やイベント、塾など様々な予定があることと思います。長い休みに、子どもにいつもと違う体験をさせてあげたい…でも仕事が忙しくて……と考える保護者の方に、おすすめしたいことがあります。

 それは、一緒に同じ本を読んで考え、話し合ってみること。涼しい部屋でおやつを食べながらゆっくり話ができたら、家にいながらにして、お子さんと一緒に心の旅行をすることができます。

サッカー男子のゲンちゃんが、ピンクのワンピースを学校に着てきて…

 今回、オススメしたい本は『ワンピース戦争』(丘 修三/文、杉浦範茂/絵、童心社)。1年ほど前、夫が見つけて買ってきました。描かれるのは小学校4年生の学校生活、主人公は4年生男子の「ジュン」。ある日、クラスメートの「ゲンちゃん」が、周囲を驚かせることをします。

 サッカー好きのゲンちゃんが、その日突然、ピンクのワンピースを着て頭に白いリボンを結んできたのです。一体、ゲンちゃんに何があったのか? 物語はここから始まります。

 クラスメートの反応は2つに分かれます。「そんなのおかしい」と笑う子。「男の子がワンピースを着ても別にいいじゃない」と受け入れる子。先生や親の反応も二分されて、とうとう「ワンピース戦争」が始まります。

 学校にはいろんな先生がいます。「子どもは子どもらしく」といって体罰をふるう先生もいれば、子どもたちの服装に対する好奇心を活かそうとする先生もいます。親も同様で、大人が一枚岩ではなく描かれていて面白く読めます。

 保護者の目線で読むと、2つのキーワードが浮かびます。

 1つ目は、本連載のテーマにしている「ジェンダー規範」です。洋服という、目に見える、分かりやすいモチーフを手掛かりに「男は男らしく」「女は女らしく」という社会から与えられる枠組みが問題になってきます。より正確に言えば、枠組みがあること自体ではなく、それを押し付け、個人の自己決定の自由を奪うことが問題なのです。

 物語の中で、子どもたちはそれぞれ、自分がありたい形を手探りで見つけ、実行を阻むものに立ち向かっていきます。もし、お子さんが同じ状況に置かれたら、どうするでしょうか。そもそも、自分が「着るべき服」以外は、着たいと思わないでしょうか。自分は着ようと思わなくても、クラスメートが着てきたら、どう反応するでしょうか。ぜひ、お子さんの意見を聞いてみてください。

 2つ目は、個性尊重と管理教育の対比です。「自分」の気持ちを重視し、他人に迷惑をかけない部分で好きなように生きることは、自己決定権の尊重という観点から容認されるべきですが、家庭や教育の現場では、必ずしもそうはなっていません。

 物語には2パターンの先生と“お母さん”が描かれます。かたや、子どもの意思を尊重し、もう片方は抑圧します。この記事を読んでいる方は、自分がどちらの考えに近いと思うでしょうか。そして、自分の実際の言動は、どちらに近いでしょうか。