「家の中で、娘の持ち物だけが、すべてパステルカラー」に違和感

 「パパとぼくがピンクのTシャツの学生さんに聞いてみたら、男の人も『みんなで決めました』とか『ピンクがいいと思いました』って言っていたよ」

 「男子学生もピンクを着てる!」などと驚くこと自体が古いのかもしれません。息子は重ねて言います。 

 「たしか僕が保育園のとき、ピンクの服を着ていったら男の子も『かわいいね』と言ってくれたことがあったよね。そもそも『ピンクは女の子が着る色』とか言ってる人自体が時代遅れじゃないの……」

 言われて思い出したのは、息子が4歳くらいのころのことです。当時、1歳の娘がよくピンク色の花模様がついた半袖の服を着ていました。「かわいいね!」と褒めていたら「僕もかわいいのを着たい」と息子が言って、娘の服を借りて登園したのでした。

 園のお友だちも、登園時に会うお母さん・お父さんも先生も、ピンクを着た息子を自然に受け入れ、「かわいいね!」と言ってくれたのを思い出しました。それとほぼ同じころ、クラスの女の子が髪を結んでいるのを見て「僕もやってみたい」と言うので息子の前髪を結んだ写真があることも、思い出しました。男女を問わず「かわいいこと」にトライしてみたいのは同じなのかもしれません。

 ところで、社会的に決められた「男らしさ・女らしさ」に縛られたくないと思っている、いわゆる「フェミニスト」にとって、ピンクは色々な意味でリトマス試験紙のような存在です。ピンクに象徴される「かわいらしさ」「女の子らしさ」を「押し付けられることにノーを言っている」つもりが、いつの間にか「自発的にピンクを選ぶ行為」そのものを強硬に拒否してしまう心理に陥りがちです。

 私は、普段、男女平等について書いたり話したりしているため、娘が園児のころ、ピンクと水色と藤色を好むのを見るたび、複雑な気持ちでした。家族の中で娘の周りだけが服も持ち物もパステルカラーなのです。

 「そんなふうに、女の子っぽい色ばっかり選んでいていいの?」という思いと、「でも、これは、娘が自分で好きで選んでいるんだから、自主性を尊重しなくちゃ……」という気持ちと、「しかし、娘は本当に自分でピンクを選んでいるんだろうか。園でお友だちの影響を受けているとしたら、それは社会的なプレッシャーではないか」という気持ちがごちゃ混ぜになり、困ったなあ……と思っていました。