映画で悪役を倒すヒロインたち

 息子は「ロン(義理の父)が義理の娘のチャーリーのために、命懸けでカーチェイスをしたのがよかった」と言っていました。これは義理の父娘の信頼関係につながる重要なシーンであると同時に「男が女のために」捨て身で頑張るシーンでもあります。

 ジェンダーの枠組みで見たとき、とても面白いのは、これが 「男が女を敵から救出するシーンではない」ことです。義理の父の役割は、あくまで主人公である18歳の女の子を 「補助すること」

 「助けるって言っても、王子様がお姫さまを悪者から『助ける』とかじゃないからね。 あくまでも、女が主役で、女が悪に立ち向かうのを男が『サポートする』っていうのが重要だから。複雑だから、間違えないように書いてね」と息子から言われて「ママは、一応、20年くらい原稿書く仕事しているから、大丈夫だよ」と答えたのでした。 (ホントに大丈夫?…と言われました……)。

 ちなみにアメリカのアクション映画にありがちな、危機的状況でヒーローとヒロインがキスして抱き合って…というシーンがないのも新鮮でした。チャーリーは物語の中でメモという男の子から好意を寄せられ、仲良くなります。しかし、二人は「手もつながないし、いちゃいちゃしないね」(息子)という状況で、ラブシーンがほぼありません。

 さらに、メモは臆病で、チャーリーのほうが勇敢です。見慣れない生き物(バンブルビー)に遭遇した時の反応も、チャーリーは好奇心を持って近づき、メモは驚いて逃げようとする、といった具合でした。

 このあたりも、男が闘い、女が応援し、男女の恋愛が描かれ……という 昔ながらのヒーロー映画とはずいぶん変わったなあ、と思います。そもそも、この映画で悪役を倒すために戦うのはあくまでもチャーリー。彼女が得意な車の運転や機械修理の技術を生かして大活躍する一方で、男友達のメモは、彼女を応援しますが、実際にはほとんど役に立ちません。