こんにちは、ジャーナリストの治部れんげです。本連載では、これまで未就学児を含む子どもと保護者や身近な大人が「ジェンダー」について楽しく話すきっかけになるような、映画、ポスター、本などを取り上げてきました。今回は大変重要なテーマではあるのですが、戦時性暴力に関する刺激が強い記述もありますので、お子さんの年齢やお持ちの知識に応じて可能な場合は話題にしてみてください。

平和構築を考えるうえで避けられないテーマ

 昨年の10月初旬に近所を散歩していると、息子が言いました。「今年のノーベル平和賞は、ナディアさんっていう人が受賞したんでしょ」。外出先でテレビのニュースを見たそうです。

たくさんマスコミの人が集まって、ナディアさんにマイクを向けていたけど、どうして?

ふだん大人向けの小説も読んでいる息子には、話せばおよそ理解できるかな、と思い、次のことを説明しました。

●ナディアさんはイラク出身で、少数派にあたるヤジディ教を信仰していること
●ナディアさんの住んでいた村がISISというテロリストに襲われたこと
●大人の男性は殺され、若い女性は誘拐されて性奴隷として売買されたこと
●ナディアさんは逃げて生き延びて自分の体験を語り、国連や世界各国にISISのしたことを裁くように訴えていること

 子どもにどこまで話すか迷ったものの「勇気のある女性だから」というきれいごとではよくない、とも思いました。紛争下における性暴力は辛い現実であり、平和構築を考える上で避けて通れないからです。

 息子は黙って聞いた後「大変な被害を受けただけじゃなくて、それをやめさせるために頑張ったから、ノーベル賞なんだね」と言っていました。

 年が明けた1月初旬、映画配給・宣伝会社ユナイテッドピープル代表の関根健次さんから、ナディアさんに密着したドキュメンタリー映画『ナディアの誓い~On her Shoulders』の試写案内をいただきました。