倒れていく闘病仲間のことは整理のしようがない

瀬戸川 その一方で、キャンサーペアレンツなどで知り合った闘病仲間の中で倒れていく人もいるので、そこはやっぱり整理のしようがないですね。今生活ができている自分と、倒れた仲間と、一体何が違うのかと。

西口 そこは常に「どうしてあの人が…」となりますね。普通に話せて、一緒にごはんも食べていた人が、翌月に「亡くなりました」と聞かされたりして。「え…先月まで元気だったのに」と絶句します。

瀬戸川 私も、一緒に遊園地まで遊びに行った仲間が、翌月亡くなるということがありました

西口 そういうのを見聞きすると「次はオレか」みたいな気持ちになりますし…。この気持ちを整理するのは難しいですね。

瀬戸川 自分の体なのにコントロールが利かないので、「いつがんが暴れるんだろう」という気持ちでいつも不安です。「○○さんも結構しんどそうだけど、頑張っているよ」などと言われても、「その人と私は違う」と思ってしまいますし。がんがどう進行するかは人によって全然違うし、それは誰にも読めないですから。

西口 金澤さんはいかがですか? 気持ちの整理や心境の変化については。

金澤 順を追って、やっと今の受け止め方ができてきたかなと思います。最初にがんが見つかったときは、下の子が生まれる直前だったので、「これからこの子たちを一体どうすればいいの?」という気持ちがすごく強かったです。

 幸い共働きで、妻がお金についてはきちんとしている人で、将来設計もしっかりしてくれていたので、そのうちに「僕がいなくなってもどうにもならないことはないかな」ということが分かってきました。少しはホッとしたのですが、その矢先に今度は転移をしてステージ4だと言われて。

 「先はそんなに長くないのかもしれない」と思ったときに、今度は「自分はどのように死ぬんだろう?」ということがすごく気になるようになって、一時期は既に亡くなった方の手記や闘病記といった本を読みあさりました。その方々がどういうふうに人生を終えたのかを知ることで、「そうか、自分もこうなるのか」と少し想像できるようになって。今はなんとなく、「自分がいなくなっても家庭や仕事は回る」ということが受け入れられるようになりました。

西口 時間とともに、だんだん変わってきたということですね。

金澤 病気になる前は、「5年後、10年後にはこうなりたい」という目標がおぼろげながらありましたけど、病気になってからはそういうのは全部なくなりました。今は「今日と明日」がすべて。遠い目標は全くなくて、目の前にあることを一つひとつクリアしていく。そういう考え方をするようになりました。