親の年まで生きることの難しさを痛感

瀬戸川 セカンドオピニオンにも行きましたが、そこでも「治らない。(がんの進行は)止められない」と言われました。乳がんって、90%は根治するらしいんです。でも、自分は残りの10%のほうに入ってしまった。そのショックはやっぱり大きかったです。「いずれ内臓のほうに転移するかもしれない」とも言われて、そうなると機能障害を起こして死ぬことになるので、親も隣で説明を聞きながら泣きそうになっていて。親を泣かせたのはつらかったですね。

西口 お父さんとお母さんはおいくつなんですか?

瀬戸川 父が74歳で、母が71歳です。

西口 まだまだ元気な年齢ですよね。

瀬戸川 でも、「ああいうふうに年を取ることって、本当に難しいんだな」と、改めて思いました。私は40歳くらいで「延命」なんて言葉を使われているんですから。

西口 親も、子どもが自分より先に死ぬかもしれないということはやりきれないでしょうね。医師から余命についての話はありましたか?

瀬戸川 まだです。ただ、「肝臓や肺などに転移したら危ない」とは言われているので、検査の結果が出るときはいつも「今回のCT(X線を使って体の断面を画像にする検査)は大丈夫ですか?」と、ドキドキします。

金澤 CTの結果を聞くときはドキドキしますよね、毎回。

西口 「がん患者あるある」みたいなものですよね(笑)。僕の場合、CTは3カ月から半年に1回くらいのペースで、そんなにしょっちゅう検査をするわけではないので、「この3カ月間どうだったか」という成績表みたいに捉えています。そこでちょっとでも「所見が見られる」ということになると、ショックですね。

瀬戸川 「ここまで頑張ってきたのは何だったんだ…」という気持ちになりますよね。

西口 皆さんは、自分ががん患者であるという事実を自分の中でどう受け止めていますか? 心の整理というか、告知されたときからの心境の変化などはありますか?

瀬戸川 心の整理はつかないですね。不安な気持ちは常に心の中にあります。でも、自分の頭の中の片付け方は、少しは身に付いたかなと思います。

西口 片付け方というと?

瀬戸川 医師から言われたことや検査結果など、自分の中で理屈として筋道立てて整理しないと、なんだか自分がおかしくなりそうで。例えば、がんを告知されたばかりのころは、「がん=死」という認識だったので、「先生、今死んじゃったら子どもたちが困るので、どうにかしてください!」みたいな焦りがありました。今は「完治しない」ということは受け入れて、「がんも持病の一つだと思って、ハンデを負ったつもりで生きていくしかないな」という具合に考えるようにしています。

西口 きれいごとじゃないけど、「こういうものだ」と割り切るということですね。

金澤 自分の中の落としどころを作るということですかね。

西口 それを聞いて、正直僕は「そういうふうには受け入れられないかな」と思いましたが、そうはいっても頭のどこかで割り切って、自分なりに消化している部分もあるかもしれません。難しい問題ですよね。

瀬戸川 恐らく、がんの受け止め方は人それぞれ違うんでしょう。私には絶対に言えないことですけど、たまに「がんになって感謝しています」と言う方もいますよね。あれは、自分の中でそう思うことによって、がんという事実をなんとか受け入れようとしているのではないでしょうか。

西口 本当にそう思っているのかどうかは別として、「そういうもんだ」と思い込むことによって、気持ちはラクになるかもしれませんね。