2015年2月、35歳のときに「ステージ4の胆管がん」と診断された西口洋平さん。まだ小さい子どもがいる働き盛りの年齢でがん告知を受け、周りにがんの経験者もいなかった西口さんは、「同じような境遇のがん患者同士が交流できる場をつくりたい」と、2016年4月にコミュニティサービス「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう」を立ち上げました。

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小さな子を持つがん患者 不安と悲しみの先の希望
西口洋平 ステージ4のがん経験 子に伝えたいこと

 その西口さんをホストにお迎えして医療関係者や子どもを持つがん患者の方にお話を聞く第3回は、キャンサーペアレンツの会員の方たちとの座談会を上・中・下でお送りします。同じころにがんを発症した同世代の3人が、仕事のことや子どもへの思い、自分の中でのがんという存在などについて、思う存分語り合いました。仕事やキャリアについて語った上編に続き、3本立ての中編となる今回のテーマは「がんになって気付いたこと」「子どもへの思い」です。

【座談会メンバーのプロフィール】

金澤雄太
35歳。妻、娘(7歳、3歳)との4人家族。人材紹介会社で転職支援のコンサルタントとして勤務。2016年の1回目の転移で入院中に「キャンサーペアレンツ」を知り、「子どもを持つがん患者」というテーマや同じ病気の仲間が集まる場に引かれて入会。

瀬戸川加代
45歳。がんに罹患後実家に戻り、現在娘(18歳)、息子(14歳)、父、母、妹との6人家族。開業して13年目になる中小企業のためのコンサルタント兼行政書士として活躍。病気ではなく生活にフォーカスを当てる「キャンサーペアレンツ」の活動に共感して入会。

今日より元気な日がまた来るか分からない

西口洋平さん(以下、西口) がんになってつらかったこと、逆に改めて気付いたことはありますか?

瀬戸川加代さん(以下、瀬戸川) 時間の大切さは身に染みました。今までできていたことができなくなるのはやっぱりつらくて、当たり前にできていた日常はすごく幸せなものだったんだなと実感しました。「いつまでも生きられるわけじゃないんだな」「日常生活を奪われるってこういうことかな」と。

金澤雄太さん(以下、金澤) 同感です。健康だったときは「自分は平均寿命くらいまで生きているだろうな」となんとなく考えていましたが、がんになって転移もして、5年生存率とか色々な数字を見せられると、「平均寿命まで生きるって、すごく難しいことなんだ」と思い知らされますね。僕は35歳なんですが、40代の自分というのが正直あまりイメージできなくて。今は、40代になることが自分にとって大きな目標ですね。

 それと「一日一日を悔いなく過ごす」「いつかやろうと思っていたことは今すぐやろう」とか、物事をどんどん前倒しにしていくことを意識するようになりました。

西口 周りから「焦ってない?」「そんなに急がなくてもいいよ」みたいに言われませんか?

瀬戸川 言われます。「そんなに詰め込まなくてもいいのに」とか。でも、「やりたいことはやれるうちにやる」って答えるようにしています。今日より元気な日がまた来るかどうかは分からないですから。

 がんになって思いましたが、「治療に専念してね」と言われても、病気と真正面から向き合うのは正直、ものすごくしんどいことです。四六時中治療のことなんて、考えていられません。仕事をやっているときは病気のことを忘れられるから、「仕事があってよかった」と思います。

金澤 忘れている時間が大事ですよね。向き合っていない時間があるから、何かあったときに「しょうがない。頑張るか」となるし、治療しているときは日常生活に戻ることが大きな目標になる。

西口 「日常生活に戻ることが目標」って、考えてみればおかしい話ですよね(苦笑)。マイナスになったからそこが目標になるわけで、普通の人からしたら「何言ってんの」という話じゃないかと。

瀬戸川 こればかりは、日常を奪われてみないと分からないですよね。私なんて、掃除できることすら幸せだと思いました。入院後に自宅に帰らないで実家で養生していて、2カ月ぶりくらいに帰ったとき、何から何まですべてきれいに掃除したんですけど、終わってから飲んだお茶のおいしさといったら、たまらなかったですね。

西口 僕の場合はお風呂ですね。病気になる前は、仕事で疲れてとにかく早く寝たかったから、シャワーでさっと済ませていたんですが、今は湯船にたっぷりお湯を張って、ゆっくり30分くらい入って、色々なことを考えたりしています。そういう時間が「すごく優雅だな」と感じますね。以前はそういうことをしようという気持ちは全くなかったので、がんの前と後では価値観がだいぶ変わりました。

 お二人は、お子さんに自分の病気を初めて伝えるときは、どうされましたか?

西口洋平さん
西口洋平さん