「ママが喜ぶなら」と娘の頑張る姿が今の生きがい

西口 がんになってから、子どもに対しての気持ちとか関わり方とか、何か変わりましたか?

金澤 家族との時間や子どもとの時間に対しての優先順位が以前よりずっと上がりました。夜の付き合いなどは極力避けるようになりましたし、子どもが「あそこに行きたい」とか「こういうことをしたい」と言えば、優先的にスケジュールに組み込むようになりましたね。本当にガラッと変わりました。

西口 僕は最近、あんまり子どもとの時間を取れてないですね。子どももそういうことを望まなくなってきたというか(笑)。

金澤 小4でもうそんな感じですか?

西口 学校が終わったら普通に遊びに行ったり、土日は習い事に行ったりしているので、もう置いていかれていますね(笑)。僕も最初は「子どものために」と考えていましたけど、片親の友人を見ていると、意外に精神的に強いんです。だから、娘も強くなるんじゃないかという期待感があったりします。

 娘も僕が病気になったことで色々大変な思いをしたとは思うんですけど、「まだ若いお父さんが病気になって、闘って、もしかしたら死ぬかもしれない」ということを間近で見る経験って、かなりレアなんじゃないかと思うんです。もちろんそうならないほうがいいんですが、娘の人生の糧になるのであれば、それはそれで悪くはないと思う気持ちもあって。

金澤 「糧にしてほしい」という気持ちは分かります。まだ若い親ががんというのはきっと特殊な経験だし、どう受け止めているのかは僕には分からないけれど、娘なりに得るものや学ぶもの、感じることがきっとあるはず。それが娘の人格形成につながるのであれば、隠すよりもちゃんと伝えようと思いますし、こんなに大変な思いをしているのだから「そうでもないと割に合わない」という気もします。

西口 こんなつらい治療をして、早く死んでしまうかもしれないのに、何も感じてもらえなかったら、本当に割に合わないですよね(苦笑)。

 瀬戸川さんの娘さんは18歳ということですから、もう大体分かっていますよね。

瀬戸川 うちの娘はダンスをやっているんですが、私は娘が拍手喝采を浴びる姿を見るのが大好きで(笑)。発表会やイベントがあると、追っかけのような感じで見に行くんですけど、「ママが見に来るなら頑張る」って言うんですよ。

金澤 それはうれしいですね!

瀬戸川 もともとダンスが好きでやっているんでしょうけど、「ママが喜ぶんだったら」とさらに頑張ってくれているみたいで。私の生きがいにもなっています。

 一方で「私のことは気にせず、好きなように生きていきなさい」という思いもあるんですが、お互いの支えになっているのはいいことかな、とも思っています。

西口 娘さんもきっと色々考えているんでしょうね。

瀬戸川 「ママも仕事ばっかりしてないで、そろそろ遊んできなよ」「自分の時間を大事にしなよ」とか言うんです。気遣いはうれしいけど、私は仕事一筋で生きてきて、長いこと遊んでいないので、「遊ぶって、一体何をすればいいんだっけ?」みたいになります(苦笑)。

瀬戸川加代さん
瀬戸川加代さん