2019年は共働き家計には様々な変化が起こります。働き方改革関連法の施行、10連休となるゴールデンウイーク、そして秋には消費税増税、保育料の無償化。もう少し先まで見通すと、2020年には東京オリンピックが開催されます。一方で、景気が後退に転じ、消費増税も見送られるのではという声も出てきています。そんな不安定な要素もある中、共働きは「ダブルインカム」の強みをどう生かしていけばよいのでしょうか。この特集では、100年ライフに向かって攻めるべきポイントを探っていきます。第3回では、ワーママの転職について2人の専門家に聞きました。

【ダブルインカム 攻めと守りのTo Do】 特集
(1)消費税、保育料無償化 DUAL家計はこう変わる
(2)住宅購入、増税前見送ったら次のチャンスはいつ?
(3)転職で収入アップ ワーママならではの戦略は?  ←今回はココ
(4)子育て期は少額投資で経済センス磨き、資産形成を
(5)保育料無償化 教育費の貯め時に変動あり?

売り手市場の今こそ、ワーママも収入アップが狙える

 空前の転職チャンスといわれている今、より働きやすい環境を求めて、転職を考えているワーママは多いのではないでしょうか。フィナンシャル・プランナーの山崎俊輔さんも「子育て世代が転職活動をするなら、今年がチャンスです」と話します。

 「団塊の世代が引退し、労働人口が毎年何十万人規模で減っているなか、企業は正社員の人材確保に動いています。現在、正社員の有効求人倍率は1.14倍。つまり、仕事を探している人より、人を探している企業の方が多いという状況です。特に現在子育てをしている団塊の世代は、就職氷河期世代で割を食った世代。もし売り手市場の現在、就活をしていたらもっといいところに就職できていた人材なら、転職することで『本来もらえるはずの収入』ポジションに移れることになります。

 ここのところ順調に拡大してきた景気も、中長期的な視点で見れば、いつかは腰折れします。そうなった際、下がった後の次の好景気のときは、団塊ジュニアはすでに50代と、転職も難しい年齢。そう考えればこそ、団塊ジュニア世代には『今の転職好期を逃すな!』と声を大にして伝えたいのです」(山崎さん)

今いる会社でお給料を上げられる可能性はある?

 一方でワーママの転職についてはこんな意見もあります。

 「もし今、『働く一人の女性』『母』『妻』と三つの顔のバランスをうまく保てているなら、転職によってそれを崩すリスクを負うのは、得策ではありません。仕事できっちりと成果を出し、子どもや夫婦のバランスを保ちながら仕事を継続できるという状況に身を置くことが、ワーママにとっては一番よい戦略だと思います」

 こう話すのは働く女性のライフキャリア支援事業を運営するLiB(リブ)代表の松本洋介さんです。2014年にLiBを設立して以来、キャリア女性向け転職サービス「LiBzCAREER」を通して、キャリアのあるワーママの転職市場を見続けてきています。

 松本さんによると、ワーママが転職したり辞める決断をする際、仕事そのものに問題があるケースは少数なのだそう。「転職の理由としては、自分が仕事に没頭し過ぎた結果子どもに影響が出たり、夫との関係が悪くなったなど、仕事とプライベートのバランスが崩れることが圧倒的に多いです」

 そうなったときに、仕事で活躍し成果を出し、働き続けていくための道は二つです。今の会社で成果を出していくか、思い切って転職をするか。自分にとってどちらがよいのか考える際に軸になるのが「時間に制限のあるワーママでも稼げるかどうか」だと松本さん。「転職に挑戦したほうがよいのは、今いる会社の人事制度や環境がワーママだと稼げない、もしくはお給料が上がらないという場合です」

 「仕事の評価には働いた時間に対してお金を払う『pay for time』と、成果に対してお金を払う『pay for performance』という二つの考え方があります。働き方改革が始まり、業務の効率化が叫ばれているとはいえ、長時間働くことが評価される仕組みは、時間に制限のあるワーママには不向き。この仕組みでは収入を伸ばそうとしても限度があります。

 一方後者は、アウトプット、つまり成果や生産性に対してお金を払うというものです。こちらなら時間に制約のあるワーママでも能力が高ければ、収入を伸ばすことができます。

 今いる会社の評価軸が『pay for time』寄りであれば、転職を考えてもよいでしょう。一方、今の会社の給与体系が『pay for performance』寄りのシステムなら、まずは転職せずに今の職場でパフォーマンスを高める努力をするのも選択肢の一つです

 今の会社に残るにせよ、転職するにせよ、収入を増やすには、仕事上のスキルアップが絶対的に必要となっていくわけです。ワーママの収入アップの戦略について、松本さんは次のように話します。

<次のページからの内容>

● 成果が可視化できる職種は収入アップに結びつけやすい
● ワーママが稼げる会社は「pay for performance」型
● ワーママこそプロの手を借りた転職を
● 能力は「数値化された成果×「プロからの第三者評価」
● 「Can」を生かしながら「Will」を叶える
● ワーママに必要なのは「フルキャリ」という概念