東大生よりよく遊ぶ子どものほうがはるかに優秀

 実際に、どんな研究が発表されるのでしょうか。

 例えば、「肛門埋め込み型マイクロおならフィルター」。これは、おならの臭いに悩んでいた学生が、お尻にフィルターを装着すれば臭いを分解できるのではないか、と考えて取り組んだ研究でした。おならの成分を分析したところ、臭いの根源となっていたのはインドールとスカトールという成分でした。そこで、この2つを分解するフィルターを装着すれば、どんなおならも臭いがしなくなる、それは技術的には可能だった、そうなのですが…。

 「大きな問題があって、トイレで大きいほうをするときに取り外さないといけない。取り外したフィルターをどうするのか。もう一度装着するか、それとも使い捨てタイプにするか…。まあこのようなバカバカしい研究テーマを、一切ふざけることなく、真剣かつアカデミックな態度で追求していく。これがバカゼミであり、その魅力だと思います。

 また、バカゼミでやっているプロセス自体は、一般の研究と実は何も変わりません。新しい独創的なテーマを持って、研究して、検証する。使っている脳の部位は同じですよ。実際、バカゼミでグランプリをとった学生は皆、その後学会で賞を取るなどしています」(生田さん)

 バカゼミと並んで、生田研究室の名物となっているのが、「卵落としコンテスト」です。ルールは簡単。「30メートルの高さから生卵を落としても割れない装置を、レポート用紙と同じA5サイズのボール紙1枚と100円の接着剤だけで作ること」。ボール紙で飛行機を作ってそこに生卵を載せてもいいし、パラシュート的な装置を作ってもいい。学生たちには1週間の時間を与えて、装置を作ってもらうそうです。

卵落としコンテストの様子。ビルの窓から卵を落とす
卵落としコンテストの様子。ビルの窓から卵を落とす

 「この結果が面白いのですが、実は東大生の成功率はわずか1~3%。航空力学に詳しいはずの名古屋大機械・航空工学科の学部生でも10%以下。それに対して、小学生や高校生は軒並み成功率20%を超えるんです。真面目一直線で生きてきて、受験勉強や狭い専門知識に凝り固まってしまった大学生たちの頭の固さが如実に表れる結果となっています」(生田さん)

 成功する子どもたちには、ある特徴があるという。それは「よく遊んでいること」と「よく手を使ったものづくりをしていること」なのだとか。

 「結局、より多く遊んだり、ものを作ったりした経験をしている子どものほうが、東大生より空想力やイマジネーション力で上を行くということなんです。失敗した東大生の中には、『風が吹いたから』『運が悪かった』と言い訳をする学生がいます。それは、風や周囲の状況のことを想定する想像力、イマジネーション力が足りないということに他ならない。イマジネーション力なくして、世界を変えるような革新的な研究開発やイノベーションを起こすことは絶対にできません。私は、学生にいかに自分たちにイマジネーション力が欠けているか、そのことに気付いてもらいたいと思ってバカゼミや卵落としコンテストを開いているんです」(生田さん)