仕事も家事も育児も、100%で頑張る、そんな父親を目指したことはありませんか? しかし、現実の厳しさにぶつかり、疲れ果ててしまってはいないでしょうか?

この特集では、4月からの新生活スタートに当たり、パパが主体的に、楽しんで仕事と育児に取り組めるような習慣の見直しについて紹介します。周囲と自分を比較して、肩肘張って頑張るパパに、少し力を抜いて、新しいことを始めることをおすすめする、そんな特集です。

第1回は、「男性学」で知られる大正大学心理社会学部准教授の田中俊之さんと、自身も妻のキャリアに合わせて柔軟に働き方を変えてきた徳倉康之さんに話を聞きました。

【新生活へ行動から変える パパの「やめる習慣、始める習慣」特集】
(1) 家族が笑顔でいるために「やめる」ことから始めよう ←今回はココ
(2) 残業、家事、ご機嫌取り…まず手放すべき6つのこと
(3)  「妻のニーズ」を聞きながら上手に“サボる”方法
(4)  働き方、妻との関係 子ども誕生で変えたパパ3人
(5) 妻留学でワンオペ経験パパも 転換点は妻だった

今のパパが受けてきた教育に「夫婦共働き」という価値観はなかった

 共働きである以上、夫も家事・育児を共に担うべき――。

 ぐうの音も出ない「正論」と言えるでしょう。この当たり前の論理に対し、「うちの夫は全然そう思っていない」「ちょっと家事をやったくらいで『俺はやっている』という顔をしている」などといったママの声が聞こえてきそうです。現実として、家庭において妻と同等に家事・育児を担っているという夫は、まだまだ少数派でしょう。

 なぜ、男女公平な社会にならないのでしょうか? 「男性学」を専攻する大正大学心理社会学部准教授の田中俊之さんは「受けてきた教育と現実の乖離が大きい」と話します。

 「現在子育て中の30代後半~40代の男性は、中学校以降、家庭科が必須の科目ではなかったと思います。学校教育において、男性が家庭で役割を担うということは想定されてこなかったわけです。育ってきた家庭もほとんどは専業主婦家庭で、お父さんがお母さんと同じくらい家事や育児をしていた、なんていう人はまれでしょう。

 これは決して小さなことではなくて、自分が育ってきた環境、そしてバックボーンとなっている教育の中に『夫婦共働き』という価値観はなかったということなのです。それが大人になってからいきなり『男性も女性と同等に家事・育児を担うべき』と言われても、うまく適応できない人がいるのは、一面ではやむを得ないことでしょう。現在は旧来の父親像から、共働きの父親という新しい時代に移行中の、まさしく過渡期なのです」

 もう一つ、田中さんは日本の社会的な問題点が男性の家庭参加を阻んでいると言います。それは「男女の賃金格差」です。

 「フルタイム勤務同士でも、いまだに男性と女性では10:7程度の賃金格差が存在します。同じように働いていても給料にそれだけの差があれば、妻が育休を取ったり、仕事をセーブしたりしたほうが収入減を抑えられることになります。つまり、合理的な判断をすると、女性のほうが仕事をセーブすることを強いられてしまうということです。これは重大な女性差別であると同時に、結果として男性の家庭参加を阻む根本的な要因になっていると思います」

育ってきた環境と現実に大きな乖離が生まれている
育ってきた環境と現実に大きな乖離が生まれている