喜怒哀楽の感情が生まれるのは、好きだからこそ

 仕事に行くときのテンションも、家庭がうまくいっているときとそうじゃないときは全然違います。うまくいっていないときは仕事中も目が死んでいたり、仕事が終わってもなかなか帰りたくなかったりして、車の中で時間を潰して、なんていう時期が僕にもありました。夫婦仲がギスギスして、妻が子どもに逃げて、お互い子どもとしか会話しないなんていう状況だと、夫はますます家庭に居づらくなって、しんどいですよね。

 でも、自分から逃げに入ると悪循環にしかならなくて、溝は深まるばかりです。悪い循環をつくるのも自分なら、いい循環をつくり出すのも自分しかいない。そこで逃げちゃいけないんです。溝ができたら、すぐ埋めるのが一番。放っておいても、誰も埋めてくれません。

 結局、家事をするとか育児をするとか、一つひとつのアクションは誰かのためにやっていることなんですが、それらは最終的にすべて自分に返ってきます。気持ちよく外で働いて、家で楽しく過ごせれば自分も幸せですよね。その居心地のいい環境をつくるための努力ということです。そのためには、妻を最優先にするのが一番の近道というだけのことなんです。

 もちろん、居心地よく過ごしたいからだけではありません。なぜそんなふうに努力できるのかと聞かれたら、率直に「妻が好きだから」。時には腹が立つことだってありますが、いつ何をしていても妻のことが頭に浮かびます。相手に対して喜怒哀楽の感情が生まれるのは、好きだからこそ。僕だって結婚生活の中で「もう離婚する!」と思ったことがないわけではありませんが、そう思うたびに初心に返って、自分の本当の気持ちに正直になろうとしてきました。

 もし「妻と子ども、どちらのほうが大切か」と聞かれたら、もちろん、両方大切ですが、選ぶのなら妻です。子どもを産んでくれたのは妻ですし、僕たち夫婦がいるからこそ、子どもたちのサポートができる。出産も4人全員に立ち会っていますが、大切な命を産んでくれた妻には感謝の思いしかないですし、そのたびに「妻を大事にしよう」という気持ちを新たにしています。

 ママが「家庭の太陽」だとしたら、パパは「太陽を輝かせる存在」かな。太陽が気持ちよく輝いていてくれたら、みんなハッピーですよね。でも、時には曇ったり、雨が降ったり、嵐になることだってあるでしょう。そこをうまく雲をどかしてあげたり、ある時はじっと嵐に打たれてあげたりしてもいい。しばらくすると太陽はまた顔を出してくれるはずです。

 妻がいつでも笑顔でいられるように、あるいは何かあったときも早く笑顔に戻ってもらえるように、うまく調整してあげること。それが夫の役割であり、家庭円満の秘訣だと思います。

取材・文/宇野安紀子 撮影/谷本結利