「私には何もないの?」と妻からメールが

 僕がそう考えるようになったのは、まだ結婚したばかりで子どもも長女一人だった頃のこと。まだ小さかった娘が熱を出して、僕は心配でたまらなくて「ごめんね、パパ仕事に行ってくるね。熱なんて、本当にかわいそう」と後ろ髪を引かれながら、仕事に行ったんです。すると後で、「私には何もないの?」と妻からメールがきました

 正直、「やっちまった~」と思いましたね。でもつい、「長女を一生懸命看病してくれて、そのことを感謝しているのは大前提。言わなくても分かるやろ」と返したことで、大ゲンカになりました。妻の言い分は「ちゃんと言ってくれないと分からない」。このことをきっかけに、妻を一番に考えようと思いました。

 では、具体的にどうしたらいいのか? 俺は仕事も家事もこんなに頑張っているのに、妻の機嫌はちっともよくならない。それどころか、怒られることさえある……と嘆いているパパもきっといるはず。僕も最初はそうでした。慣れないながらも率先して家事育児をやっていたつもりなのに、それがそのとき妻のしてほしいことではなかったりして、「今してほしいのはそれじゃない」なんて言われて。それで「俺だって頑張ってやってるのに!」と言い返したりして、夫婦ゲンカの繰り返し。

 「うちの夫、何もやらないんだよね」という妻の愚痴に対して、「あれだって、これだってやっているじゃないか!」といら立つ夫。こんな言い争いに心当たりがある方も多いのではないでしょうか? これは、夫婦間の意識がズレていることが原因です。大事なことは、とにかく「妻が今してほしいサポートをすること」なんです。

 妻は常に子どもの様子を見ながら動いているので、その邪魔にならないように、でも妻の負担が軽くなるように支えるのが夫の役目だと僕は考えています。具体的にはその都度「今、何かおれにできることない?」と聞けばいいんです。そうすれば、お風呂に入れてほしい、私がいためるから野菜を切ってほしい、今は何もないから子どもと遊んでいてほしい、などと言ってくるので、その通りに動けばいい。

 こう言うと「指示待ち夫」みたいですが、最初からなんでもできる人なんていません。まずは何をしてほしいか聞きながら動いていくことで、家庭内での流れがだんだん見えてくるようになります。そうしたら自分から動くようになればいいんです。でもそれで分かった気にはならず、「妻のニーズ」は定期的に聞いたほうがいいと思います。

「義務」になるとつらい。適度に力を抜いて

 普段は仕事が忙しく、不在がちだというパパもいるでしょう。そういう人は、せめて休日に家事育児をするんです。そうすると、「普段こんなに大変なんだな」という感謝の気持ちも生まれてきます。

 僕もここ数年で、ようやくその流れが分かるようになってきたくらいで、「今日は疲れているみたいだから、洗い物をしようかな」「体調が悪そうだから、ごはんは僕が作ろうかな」と自然に動くようになりました。特に子どもが増えてくると、上の子たちのケアは僕の役目。乳児がいる今は、妻がどうしても授乳などでかかりきりになるので、いつも以上に家事をするのはもちろん、上の子たちの遊び相手になったり、宿題も見て、学校の話を聞いたりしています。子どもたちにどんな友達がいるのか、学校生活はどうなのか、そういうことも知ることができますし、それによって妻との会話も増えたりして、いいことばかりです。

 家事育児の中で僕が一番得意なのは、子どもの宿題を見ること。子どもがやりたがらないときでも「パパが見るから、一緒にやろうぜ!」と言って、計算カードを作ってゲームっぽくしたり、お風呂に九九の表を貼って一緒に数えたり。そうすれば子どもと一緒にお風呂も済ませられて、妻の負担も一つ減らせます。

 でも、これが「義務」になってくると、つらくなるんですよね。だから、大事なのはくれぐれも無理はせず、適度に力を抜くことです。僕は家でスマホゲームもやるし、テレビも見ます。コツは、自分の興味があることややりたいことに、子どもを巻き込んでしまうこと。一緒にテレビを見るのもアリですし、僕は釣りが趣味なので、子どもたちとよく釣りに行ったりします。そうすれば、共通の話題で盛り上がれて自分も子どもも楽しいし、妻も喜ぶ。自分の力の抜き加減と子どもの波長を合わせるとラクですね。

 要は、何事もコミュニケーションにしてしまうんです。育児もそうだし、家事もそう。一緒に料理をすることで、自然に妻との会話も増えます。僕が好きなのは、キッチンで妻と二人で料理しながら、子どもたちの様子を見る時間です。ケンカし始めたら止めに入ったりしてね。家事育児のストレスはゼロとは言いませんが、僕がどうしても無理だったら妻に任せるし、妻が無理なら僕がやる。妻にも、力を抜くところは抜いてほしい。何がベストバランスなのかは、常に探っていますね。