共働きファミリーの子育て費・教育費は、私たちの親世代とは大きく違ってきました。ファイナンシャル・プランナーの前野彩さんが「教育費の本当の話」を紹介していきます。新著『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール(日経DUALの本) 』から、一部お届けいたします! 今回のテーマは「共働き夫婦の家計管理」です。

「支出分担」、「金額分担」、「1人分で生活」の3タイプのメリットと改善ポイントを伝授

 共働きの家計管理において、ありがたくも悩ましいのは、「収入が2つあること」ではないでしょうか。収入が1つなら、振込口座が1つなので家計管理もラクなのですが、収入が夫婦で2つあると、収入口座が2つに分かれます。

 1人が複数の銀行口座を保有しているのは当たり前の時代ですから、夫婦2人分の口座となると、どの口座にいくらの収入があって、いくらのお金が家計として出ていくのか、分かりにくいのが実情でしょう。

 そこで、代表的な家計管理パターンを3つに分けました。それぞれの、特徴と改善策を考えてみましょう

(イラスト/エイイチ)
(イラスト/エイイチ)

①「支出分担派」はお金が貯まりにくい

 共働きで多いのが、この「支出分担派」です。たとえば、夫は住居費と水道光熱費、通信費を担当し、妻は、食費と教育費と医療費を担当し、その他のレジャーやおこづかいはそのときのお互いの懐具合によって支払う……といった家計管理です。心当たりがある人も多いのではないでしょうか?

 このタイプでは、夫が主に自動引き落としの項目を担当し、妻が主に現金払いの食費などを担当することが多く、項目別の支出担当者が明確になることがメリットです。ただし、どうやって支出の分担を決めたのか? となると、いきあたりばったりなことが多く、独身時代からの口座をそのまま使っていたり、その場その場で引き落とし口座を適当に決めていたりする場合も多いようです。

 その結果、合計支出がいくらなのかがわかりづらく、3タイプの中でもお金が貯まりにくい傾向があります。

 ではどうしたら貯まりやすくなるでしょうか。自動引き落としの項目が夫婦それぞれにある場合は、どちらかに集中させることです。変更手続きは面倒かもしれませんが、1冊の通帳を見るだけで自動引き落としの項目と金額が一目で確認できるのは、効果大ですよ。

 また、現金で使うお金も予算を決めて、毎月定額を引き出すようにすると、家計管理が楽になります。

 もしも夫婦どちらかが引き落とし項目の全部を担うのが難しい場合は、どちらがどの項目を負担するのかを改めて決め直して、パパの自動引き落とし口座1つ、ママの自動引き落とし口座1つの合わせて2つで管理することをおススメします。

②「金額分担派」は共通口座の名義人に負担

 夫婦それぞれの収入額に応じて負担金額を決める「金額分担派」は、お互いの収入から「家計」として負担する金額を決めて、共通の家計口座(名義はどちらかの口座)に入れる方法です。

 たとえば、それぞれ収入の6割を共通の家計口座のお金として使うと決めたとしましょう。夫の手取り収入が30万円ならその6割で18万円、妻の手取り収入が20万円ならその6割で12万円を家計口座に入れます。この夫婦なら合計30万円が家計のお金となり、この口座から住居費や水道光熱費などの引き落とし項目はもちろん、食費などの現金支出もすべて引き出して使います。

 このタイプのメリットは、お互いが収入に応じて負担していることが明確なため、不公平感が少ないこと。また、家計口座に入れない残りの4割のお金は自分のお金ですから、自由度もちゃんと確保できるから、ストレスもたまりにくいのです。

 ただし、個人が自由に使えるお金が多過ぎると、夫婦それぞれ「家計のお金はちゃんと払っているし、将来必要な教育費や老後資金は、相手が貯めてくれているはず!」という期待が高くなり、貯蓄が手薄になりがちです。しかし、相手がこちらの期待通りにしっかり貯蓄してくれているとは、限らないことも……。

 そこで、家計口座の「今」使うお金に加えて、「将来」の教育費や老後資金なども、家計口座の中から積み立てる仕組みをつくるようにしましょう。

 なお、共通口座とはいっても、どちらか1人の名義でしか口座はつくれません。気持ちの上では2人の共通口座でも、口座の名義はどちらか1人です。そのため、定期的な入金や現金の引き出しなどの家計管理の作業は、主として名義人になった方が負担することになります。その「ひと手間」の壁を乗り越えられるかが、金額分担派の家計管理の鍵です。