私にとっての「コミュ力」は、「相手の言いたいことを整理する力」

 私たちが結婚したのはお互い26歳のとき。周りに比べて比較的早い結婚でした。夫婦ともにすぐにでも子どもを授かりたい気持ちでいましたが、結果として私たち夫婦が親として子育てをスタートするに至るまで、3年近くかかりました。

 多分その時間がなければ、私たちは今のようにお互いの存在を尊重し合える夫婦にはなっていなかったと思います。共に苦しみ、つらいことも共有し、相手のために何かできることはないかと試行錯誤する時間があったからこそ、「今」があると思っています。

 「コミュ力向上委員会」という連載タイトルは、私の話を聞いた担当編集者が付けてくれたのですが、正直なところ、私は何かを打開したり、解決したりするための「コミュ力」など持ち合わせていません。ただ、一つだけコミュニケーションについて心掛けていることをあげるなら、「相手の話を聞くこと」、それに尽きます。

 まず、相手が話したいことを最後まで聞く。それに対して、合いの手を入れるだけ。素直に驚き、素直に笑って、相手に伝わるように反応することです。夫婦で話をするときにも、背を向けて会話することは絶対にありません。

 私が考える「コミュ力」とは、「話を聞いて、相手の言いたいことを整理する力」なのです。もっとも、これをしっかり仕事に生かせていれば、もっといいアナウンサーになれているはずなんですけどね(汗)。

 さて、6回にわたって家族や子育てに関するお話をさせていただきましたが、言わずもがな、これがわが家のすべてではありません。人様にお話しできる範囲で、ありのままの日常をつづってきたつもりです。

 私たち夫婦も、3人の子どもたちが主演を務める「家族」という名の舞台上で、「パパ」や「ママ」という配役を演じているところもあります。いずれ子どもたちが巣立つときに、親という仮面を外して、思い切り羽目を外そうか……なんてことも考えています。家計を気にせず豪遊したり、行ったことがない海外の国々を回ったり、キャンピングカーで国内津々浦々、転々としたいですね。

 でも、妄想しているだけでは形にはなりません。思っていることは言葉にして、望む人生を自分で切り開いていきたいと思います。

文/樋口可奈子 写真/小野さやか

蓮見孝之(はすみ のりゆき)
蓮見孝之(はすみ のりゆき) 1981年、埼玉県生まれ。2004年、TBSテレビにアナウンサーとして入社。2008年にフリーアナウンサーの大徳絵里さんと結婚。2010年に長男、2013年に次男が誕生。JFA公認サッカーC級コーチ、サッカー検定4級、書道師範、秘書技能検定2級、高校公民科教員免許、保育士資格などさまざまな資格を保有。現在の担当番組は『JNNニュース』、『ひるおび!』、ラジオでは『蓮見孝之まとめて!土曜日』『ジェーン・スー 生活は踊る(日替わりパートナー)』。