リアルな体験もオープンに話す

 子育てに奮闘する様子をオープンに話す姿もまた、父親たちにとっては心強い。米メディア、『People.com』(2019年2月)によると、ウィリアム王子はロンドンで、これから子育てに携わる将来のパパたち向け、親として必要な心構えを学ぶ慈善活動に参加した。参加者たちには、「睡眠不足でストレスがたまる大変さ」や、子育ては「計画通りに進められるキャリアのように思い通りに行かない」といったリアルな体験を話した。

 夫婦で子育てに真剣に取り組む姿は自然体で、英国の一般家庭と変わりはない。その道筋をあえて進んでいるのは、ウィリアム王子の愛情の深さはもちろんだが、庶民と共にある王室の在り方を示したり、父親の育児参加を推進したりする「社会的なミッション」を痛感しているが故だろう。

 ウィリアム王子自身は子育てを通じて、どのような気持ちになるのだろうか。2016年に英国で放送されたドキュメンタリー『Ant (アンソニー・マクパートリン) とDec (デクラン・ドネリー)が(チャールズ)皇太子に会う:皇太子信託基金の創立40年』の中で、こんな思いを語っていた。

 「今まで物事に対して、深く不満を抱いたり、心配したりしたことがなかったけれど、世界で起こった出来事にも、敏感になっている。それは父親だからかな。人生がどれだけ貴重なものか、あらゆることに考えが及ぶようになった。もし子どもが育っている最中に一緒にいられなくなったら。これほどつらいことはない

 母であるダイアナ妃との別れが、ウィリアム王子にとってどれほど悲しいものだったのかは、想像もつかない。けれど、その生き方には子どもに愛情を注ぎ、「よりよい世界にしたい」と願った母の優しさが受け継がれているように見える。

文/斉藤真紀子