「自立した存在でありたい」と、自ら運転して産院まで向かう

 ジョージ王子が2013年に産まれたときのコメントも、茶目っ気あふれるものだった。お披露目会見でニコニコしながら、「彼(ジョージ王子)は僕より髪が多い。ありがとう神様」とコメントしたのだ。薄毛をネタにはしていても、自虐ジョークにはならず、幸せジョークにしか聞こえなかった。

 ぐっとくるのは、このジョークの裏側にあったエピソードだ。ウィリアム王子は産声をあげて間もないジョージ王子とキャサリン妃を自らの運転で迎えに行き、産院の前でお披露目会見をした。運転手を付けるわけでも、誰かを迎えによこすわけでもない。その姿が「新しい時代のプリンス」と注目を集めたのだが、実のところ、ハラハラし通しだったというのだ。ウィリアム王子は1カ月後の米メディア『CNN』のインタビューでこう話している。

 「事前に練習していたんです。(赤ちゃんを)落としたり、ドアをうまく閉められなかったりしたらどうしようと心配だったから」

 背景には、「自立した存在でいたい」「王室の育ちとはいえ、新しい世代なので、自分でできることは自分でしたい」。こうした考えがあったことも、この単独インタビューで明らかにしていた。

ダイアナ妃の「普通の子育て」を継承する

 気負わず、自然体のウィリアム王子。しかし、その行動を通じて、「新しい王室の姿を示したい」という決意ものぞかせる。

 ウィリアム王子自身もまた、王室の慣習を打ち破るスタイルで育てられた。一般家庭の出身だった母親のダイアナ妃は特別扱いではなく、「普通の子育て」にこだわったからだ。従来の王室の慣習のように乳母には頼らず、自身の元で子どもを育てた。

 ウィリアム王子は英国の王子として初めて、一般の生徒と共に小学校に通学した。一般市民と同じ感覚を身に付けるため、街に出かけて買い物や外食を楽しんだりもして、その様子が報じられることもあった。ダイアナ妃は自身が熱心に関わっていた慈善活動にウィリアム王子やヘンリー王子を伴い、貧困に苦しむ人々にも、敬意を払うことの大切さを伝えた。