<相談者のプロフィール>

<夫婦の仕事と年収>
■妻(48歳)/専業主婦
■夫(49歳)/正社員 年収1200万円(前倒しで支給されている退職金130万円を含む)
■子(5歳)/幼稚園年長

<現在の貯蓄について>
■定期預金 630万円
■一般財形 240万円
■預貯金 130万円(教育費として)
■貯蓄のペースは、月5.5万円(うち教育費として2万円)、ボーナス時に40万円

<住宅について>
■持ち家(分譲マンション)
■2014年に変動金利33年ローンで3000万円借り受けて購入。当初金利は0.64%。
■ローン残高は現在2900万円

<金融商品について>
■株 130万円
■債券 600万円
■生命保険(夫)定期的終身 5000 万円(定期 4500万円)
■個人年金 60歳10年確定 年金額50万円
■個人年金 60歳払込満了・10年確定 年金額100万円

<その他>
■退職金の上乗せ分(年130万円)は定年退職まで毎年支給される予定。ただし、職位が下がれば20万円ほど下がる可能性あり
■住宅ローン減税があと6年使えるので、その後に1300万円の繰り上げ返済を検討している
■単身赴任中の夫の生活費(食費、お小遣い)が月に12万円ほどかかっており、毎月10万円の赤字(ボーナスから補填)

<山崎俊輔さんの回答>

「年収1000万円=家計に余裕」は間違い!

A. まず、教育費について。日本政策金融公庫によると、高校から大学までにかかる費用は約1000万円です。ただし、これは私立校、公立校の平均値。中学から私立に進学し、高校も大学も私立と考えると、トータルで1300万円以上かかると思ったほうがいいでしょう。

 世帯年収が1000万円を超えると私立中学への進学を考えがちですが、実は「年収1000万円=家計に余裕」は間違い。これくらいの年収がある家庭は、つい気が緩んでしまって余計な出費をしがちなのです。

 相談者さんのご家庭はお子さんが1人なので、共働きで貯蓄すれば私立への進学も十分可能でしょう。でも、油断はできません。中学受験をするなら、小学校中学年から塾代がかかりますし、私立中学入学後は学費が発生するため、貯蓄する余裕はなくなります。子どもが大きくなってから、と考えるとむしろためるチャンスを逃してしまうので、今のうちからハイペースでためていく意識を持つことが重要です。それこそ「子どもが中学校に入る前に1300万円ためる」くらいの気持ちでいましょう。

夫の稼ぎを増やすより、妻が働いたほうが合計収入を一気に増やせる

 夫が49歳で年収1000万円を超えているというのは、かなり順調なキャリアを歩んでいらっしゃると思います。とはいえ、先ほども申し上げましたが、このくらいの年収がある方は財布が緩みがちで、思っている以上に支出が多いケースが往々にしてあります。

 すでに年収1000万円を超えている人がそれ以上収入をアップさせるのはなかなか難しいことです。また、所得税は累進課税なので、夫がこれ以上稼いでも、増えた年収のすべてが手元に残るわけではありません。相談者さんは税金の問題で扶養枠を超えないパートにしようと考えているようですが、むしろ正社員になって働き、年収250~300万円を稼いで、税金を納めるほうが税率も低く、お得です。

 年収100万円で5年間働くと、トータル500万円。一方、正社員として働いた場合、時短勤務だったとしても年収240万円くらいは稼げるのではないでしょうか。5年間働けば1200万円。税金と社会保険で20%引かれたとしても、約1000万円を得られることになります。

 もし、年齢のことで正社員になれるかどうかを危惧されているとしたら、「空前の人材不足である今こそチャンスがある」と前向きに考えてみてはいかがでしょうか。厚生労働省が公表した最新の有効求人倍率(2018年8月)によると、求人全体で1.63倍、正社員だけでも1.13倍とかなりの高倍率です。

参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年8月分)

 夫が単身赴任中でワンオペの状況だと、フルタイムで働くというのはなかなかハードルが高いことかもしれません。でも、パートでも時間を作って働くという点においては、ハードであることは同じです。むしろパートの2倍稼ぐことができれば、たまにファミレスで夕食をとったり、お総菜の購入も気にせずできるようになります。「上手な手抜き」として利用してみてもいいでしょう。

 景気と子育て世帯の年齢を考えると、今が人生最後で最大の、正社員になれるチャンスかもしれません。無理だと最初から決めつけずにチャレンジしてみてはいかがでしょうか

 ――「解決編」では、「高齢出産夫婦が考えたい、家計の見直しと老後資金作り」について山崎さんに伺います。

(取材・文/樋口可奈子 イラスト/エイイチ)