夫(48歳)、長男、(11歳)、次男(1歳)と4人家族のM子さんは、夫が大手企業の管理職から非正規の公務員に転職、M子さん自身も第2子出産・育休後の時短勤務で年収減に直面しています。長男の私立中学受験に向けた塾代、次男の保育代がかかる中、貯蓄はできるのか、貯蓄を取り崩す癖をつけてしまっていいのかとお悩みです。
 そんなM子さんに、『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール(日経DUALの本)』の著者でファイナンシャル・プランナーの前野彩さんが、教育費の準備の仕方についてアドバイスします。

■上の記事はこちら
夫の転職により年収半減 教育資金はどう確保していく?

<相談者M子さんの悩み>

夫の転職が決まり年収が半減。今後の教育資金が心配です。

M子さんのプロフィール

<夫婦の仕事と年収>
■夫(48歳)/非正規・公務員 年収500万円(税込み)、月給30万円(手取り)、ボーナス20万円(手取り)
■妻(37歳)/正社員・サービス 年収550万円(税込み)、月給26万円(手取り)、ボーナス130万円(手取り)

<子ども>
長男(11歳)と次男(1歳)

<現在の貯蓄や金融商品>
■夫/普通・定期預金3000万円、株式400万円
■妻/普通・定期預金400万円、財形・積立250万円、株式50万円

<毎年の貯蓄>
夫の転職後はどうなるか不透明だったが、前野さんとの相談により、年間97万円貯蓄できると判明

<住宅ローン>
2年前に都内に4500万円の中古マンションを購入。頭金1500万円で、3000万円を借り入れ。20年ローンで、変動金利(1.025%)。毎月13万8000円を返済中。

次男は児童手当プラス毎月2万、長男は貯蓄から教育資金を捻出

FP前野彩さん(以下、前野) 前回は、長男くんを被保険者にした保険の受取金が大学費用には間に合わないことが分かりました。他に何か、教育資金としてためているものはありますか。

相談者M子さん(以下、M子) 児童手当は使わずにずっとためています。

前野 これまでは児童手当は月5000円だったので、長男くんの分は66万円ですね。今後は月1万円ためられるので、小学6年生から中学校を卒業するまでに48万円、合計で114万円たまります。

M子 思ったよりはたまりますね。

前野 私立中学の目標校は決まってきましたか?

M子 はい、何校かは決まりつつあります。

前野 目標校の目安がついてきたら、学校のホームページを見ると授業料や制服代などが具体的に分かるので、中学、高校時代に必要なお金が分かります。平均的な私立中学の学校教育費は年間101万円(※前野彩著『本気で家計を変えたいあなたへ<第3版>』より。以降の金額も同様)。これには修学旅行、部活動費、学年費、制服代なども含まれています。私立中学でも塾に通う生徒も多いので、学校外活動費が年32万円で、合計すると年133万円、月にすると11万円くらいかかります。

M子 やっぱり、結構かかりますね。

前野 私立高校の学校教育費と学校外活動費の合計は平均104万円、月にならすと約8万6000円。つまり、中学入学から毎月10万円前後がずっと出ていく状態になる。それを賄える家計にしていく必要があります。しかも、これは一人分ですからね。

M子 10歳違いですから、上の子が大学に入ったころに、下の子が中学受験に向けて塾に通うようになります。その時期の出費が怖いです。教育費の負担が切れ目なくずっと続きますから……。

前野 下のお子さんはまだ1歳ですから、17年かけて大学費用をためていけます。児童手当が3歳まで月1万5000円、それ以降1万円で、全部ためると200万円。それだけで、国公立大学の授業料にはなるんです。私立理系だとすると400万円足りないので、それを毎月ためていくとすると2万円。児童手当は全部ためつつ、プラス2万円を積み立てていけばいいんです。

M子 2万円なら…、何とかいけそうです。

前野 では、長男くんのためにいくら積み立てていくかですが、今11歳ですから、大学入学まであと7年間です。子どもの教育費は大事ですが、そのためだけに生きているわけではないし、貯蓄はしっかりあるので、貯蓄から活用しようと考えてもいいと思います。今ある貯蓄を取り崩して長男くんの教育費に使うことに対する心理的な抵抗はありませんか?

M子 そうですね。主人とも、多少の取り崩しは覚悟しようと話していたので。

前野 次男くんの大学費用はコツコツ児童手当プラス2万円をためて、長男くんの分は4100万円ある貯蓄から引き出す、と割り切りってはどうでしょうか。

M子 住宅ローン減税があるので、あえて繰り上げ返済はせずにローンを抱えたままにしていますが、このままで大丈夫でしょうか?