不妊治療経験者である山崎さんが心に決めた3カ条

<相談者のプロフィール>

<夫婦の仕事と年収>
■夫(40歳)/正社員 年収550万円
■妻(35歳)/正社員 年収540万円
■結婚7年目。2年前から不妊治療を開始し、現在は体外受精のステップに進んでいる

<現在の貯蓄や金融商品、住宅について>
■家賃15万円の賃貸マンション住まい
■銀行預金1200万円

<山崎俊輔さんの回答>

不妊治療は時間勝負。妻は仕事を辞めて夫婦で治療に専念を

A. 実は、私たち夫婦も不妊治療を経験しています。2人の子どもはいずれも体外受精で授かり、トータルで250万円ほどかかりました。正直、これはお金がかからなかったほうだと思います。不妊治療にある程度のお金がかかるのは事実です。

 不妊治療に臨むに当たって、私自身が決めた3カ条があります。

●できる限り一緒に通院すること(医師の説明も一緒に聞くこと)
●治療の方針については夫婦で一緒に考えて決断すること
●妻にはお金の心配をさせないこと

 妻には肉体的に大きな負担がかかるわけですから、せめて精神的な負担については軽減しようと「費用については気にするな」と伝えていました。とはいえ、病院で治療にかかる金額を聞いて“やせ我慢”したことも実際にはありましたね。

 相談者さんの奥様は35歳。不妊治療においては「急いだほうがいい」と言われるステージに来ていると思います。私の妻が治療を始めたのは36歳のときで、医師からは「もっと早く来ればよかったのに」と遠回しに言われました。結果として2人授かることができたのでよかったのですが、もう2~3年早く病院に行けばよかったなと、今となっては思います。費用負担ももっと少なくてすんだかもしれません。

 もう一つのテーマは男性の参加です。不妊治療について、妻だけが病院にかかっていて、夫は検査すらしていないという夫婦は少なくありません。また、DUAL読者のなかには2人目不妊で悩んでいる人もいるでしょう。1人目は自然にできたから2人目もそのうちに……と思っていても、時間はあっという間に過ぎていきます。不妊治療は時間の勝負。男性もきちんと検査をすることで不妊の原因が分かり、結果的に治療費が抑えられるということもあります。いずれにしても、子どもが欲しいと本気で思っているのなら、早めに動いたほうがいいのは間違いありません。

退職で収入が半減しても、生活できないほどではない

 相談者さんの場合、奥様が仕事を辞めることで、現在1090万円ある世帯年収が半分近い550万円にまで落ちてしまいます。生活の水準を今より下げなくてはいけないのは確かですが、夫婦2人が全く生活していけない収入でもありません。子どもを授かるという目標があるのならば、生活をしっかり見直し、その水準に合わせていけばいいのです。「収入が減ると生活が苦しくなるので仕事は辞めてほしくない」と思うなら、はっきりそう話し合ってみるべきです。奥様にも世帯年収を一時的に半減させる覚悟があるか(多分あると思いますよ)、確認してみてください。

 相談者さんの場合、幸いにも奥様は薬剤師という国家資格を持っています。一度辞めて一定期間休んだとしても、次の就職先も比較的決まりやすいでしょうし、今と同じような年収も得やすいのではないでしょうか。

 私は基本的には共働きを推奨していますが、健康上の理由がある場合だけは別。相談者さんの奥様は、過去の流産で精神的にダメージを受けていることもあるので、仕事を辞めることで少しでも負担が減るのであれば、今はそれを優先してもいいと思います。

 ――「解決編」では、不妊治療にまつわるお金の問題について、山崎さんに伺います。

(取材・文/樋口可奈子 イラスト/エイイチ)