過去2回出た転職金は既に使い切っている
<夫婦の仕事と年収>
■夫(36歳)/正社員 年収600万円
■妻(35歳)/正社員 年収400万円
■長男(5歳)と長女(3歳)の4人家族
<現在の貯蓄や金融商品、住宅について>
■住まいは賃貸マンション(家賃12万円)
■銀行預金600万円
■リーマンショックの時期に株で大損。それ以来、投資とは無縁
■新卒時に付き合いで入った保険と結婚時に増額した保険の支払いが月に5万円(生命保険、医療保険など。いずれも掛け捨て型)
■学資保険には入っていない
■最近転職した会社には企業型確定拠出年金があるが、リスクが怖いので定期預金と利率保証型積立生命保険のみで設計
<その他>
・妻は大学卒業後ずっと同じ会社で働いている(住宅メーカーの一般職)
・夫は中堅の広告代理店の営業。27歳、30歳、36歳で3回の転職を経験。1回目、2回目の転職時にそれぞれ退職金を支給されたが、既に使い切っている
<山崎俊輔さんの回答>
退職金のモデルケースは満額で1138万円~2374万円
A. 相談者さんは比較的若い時期に2回退職金をもらっていますが、勤続年数から考えてもあまり大きな金額ではないはず。その場合は使い切ってしまうこともあるでしょう。一般的に、退職金のモデルケースは新卒で入社して定年退職までの38年間勤めた人を対象にしています。参考例として、中小企業の場合は1138万9000円(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」平成28年版)、一部上場企業の場合は2374万2000円(日本経済団体連合会「2016 年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」)という金額が出ています。かなりまとまった金額をもらえますから、「現役時代には老後資金が準備できなかったが、退職金があったので老後の助けになった」という人も少なくありません。
相談者さんの場合、退職金が同僚より少なくても、妻が正社員なので2人とも退職金がもらえるという点が老後の大きなアドバンテージになります。例えば、夫婦ともに退職金が1500万円だったとしましょう。夫がそれより3分の1少ない1000万円、妻は育休期間中を差し引いて1200万円もらえたとします。夫婦合わせて2200万円もらえるのであれば、一部上場企業の退職金と同程度になります。
また、妻のぶんも厚生年金が出るので、妻が専業主婦だった世帯と比べて、老後は月に6~7万円ほど上乗せされた年金がもらえることになります。共働きは老後にもメリットが大きいのです。以上の点からも、相談者さんが心配しているほど、老後にお金で困ることはないでしょう。
老後に“ゆとり”を求めるなら資産形成が必要
ただし、「生活には困らない」ということと、「生活にゆとりがある」というのは別の話です。「あと200万円あったら夫婦で何回か旅行に行けたのに」「あと500万円あったら介護付き有料老人ホームに入れたのに」と思わず考えてしまうシーンがあるかもしれません。老後資金が多くて困ることはないのです。
リタイアしてしまった後では老後資金は作れません。退職金を目減りさせてしまったぶん、今から取り戻す努力をするといいでしょう。
――「解決編」では具体的な老後資金の増やし方について、山崎さんに伺います。
関連リンク
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」平成28年版
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/28chingin_2_8.pdf
日本経済団体連合会「2016 年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2017/041.pdf
(取材・文/樋口可奈子 イラスト/エイイチ)