<松永暢史さんの回答>

他の子にはない能力を育てるのは家庭だけ

A. まず「ズバ抜けた」部分を認めてあげましょう。前向きで積極的なこと、好奇心旺盛なこと、物おじしないこと、ひらめき力や発想力があること。これこそ、多くの日本人に欠けている個性であり、多くの企業が求める人材です。

 しかし、今の小学校では「ズバ抜けた」部分までひっくるめて「問題」にしてしまいます。それは、黒板に向かって先生の授業を聞き続けることを求めるからです。「前向きで積極的で好奇心旺盛でひらめき力や発想力のある子」を求めているくせに、小学2年生の子に「45分間授業を聞き続ける能力」をつけさせようとするのですから、矛盾だらけです。

 しかし、どんな子にとっても45分間集中力を維持するのはつらいんです

 息子さんのような子が、授業の途中で無関係な知識を披露したり、「虫が入ってきた」と大騒ぎしたりすることで、みんながワッと笑って、教室全体がリフレッシュする、それで何とか45分が成り立っていることに先生は気づいていないんですよ。

 学校の先生たちは、息子さんのような子を黙らせるのではなく、盛り上げ役として上手に使うべきなのです。次々面白い意見を出し、授業が活性化するはずです。

 とはいえ、そんな先生はごく少数。学校では「ズバ抜けた」能力は潰されがちです。家庭で伸ばすしかありません

小学生時代は読書と自然体験。それ以外はあとでも大丈夫!

 「ズバ抜けた」能力を伸ばすために、家庭でやってほしいことは2つあります。

(1)本を読むこと。本を好きにさせること。
(2)思いっきり遊ばせること。週末には自然体験をさせること。

 

 小学生時代に国語力さえ育てておけば、他の学習は後から十分追い付けるのです。まずは読書です。子どもの興味に合わせた本を探し、どんどん読ませるようにしたいものです。

 そしてこの時期は、勉強よりも遊びを優先させてください。友達との遊びはもちろん、週末には可能な限り自然体験をさせましょう。キャンプやたき火が特におすすめです。

 落ち着きのない子も、自然の中に連れ出すと驚くほどの集中力を見せるはずです。お手伝いを面倒がる子でも、「川から水をくんでこよう」「飯ごうでごはんを炊こう」などは大好きです。そしてたき火の周りでは、見たこともないほど落ち着くはずです。そして自然の中には、好奇心を刺激する無数の体験があふれています。

 これらの体験は即効性のあるものではありませんが、心の奥に蓄積されて、大人になったときのエネルギーの源になります。パワフルに仕事をしたり、恋をしたりする力になるのだと思います。

学校でのトラブルは「大人のテクニック」で乗り越えて

 「問題児」の部分は、時間が解決します。

 私の経験から言って、どんなに落ち着かない子でも14歳くらいでガラリと変わります。男の子はとくにそうです。

 もちろん、しつけは必要です。命の危険につながる行為や、人を傷つけたり邪魔したりする行動は、真剣に厳しく叱ります。でも、あとは目をつぶりましょう。四六時中ガミガミ言うと、何が大事なのか分からなくなります。

 でも、実際にはガミガミ言う親が多いですね。わが子を「普通の子にしよう」と願う気持ちは分かりますが、効果はありません。子どもに大きなコンプレックスを与えてしまい、「ズバ抜けた」能力を伸ばせなくなってしまいます。

 小学生のうちは、親が防波堤になるのが一番です。大人のテクニックを駆使してください。周囲のお母さんたちには「迷惑かけてごめんね。また何かあれば教えてね」と穏やかに接し、先生には「家でもよく言い聞かせます」と頭を下げておくのです。ついでにPTAにも立候補しておきましょう。

 小学生時代は、普通の子より劣って見えるかもしれませんが、気にする必要はありません。大人になってから勝つのは「ズバ抜けた問題児」なのです

小学生時代は思い切り遊ばせよう(画像はイメージ)
小学生時代は思い切り遊ばせよう(画像はイメージ)

(取材・文/神 素子 イラスト/まつおりかこ イメージ画像/iStock)