間もなく子どもが誕生する39歳のS子さんと46歳の夫は、できればわが子を中学から私立に通わせ、海外留学もかなえてあげたいと考えています。世帯年収は1500万円ほどあるけれど、一体どれくらい教育費にかけることができるのか――。現状の収入と支出、貯蓄を基に未来の家計をシミュレーションしたところ、なんと老後の貯蓄が億単位の赤字になることが判明! その理由と解決法を、『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール(日経DUALの本) 』の著者でファイナンシャル・プランナーの前野彩さんが詳しく解説します。

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相談者S子さんのプロフィール

<夫婦の仕事と年収>
■夫(46歳)/正社員・金融 年収1050万円(税込み)、月給43万円(手取り)、ボーナス250万円
■妻(39歳)/フリーランス・マスコミ 年収450万円(税込み)、月給33万円(手取り)、ボーナスはフリーランスのためなし

<現在の貯蓄や金融商品>
■夫/普通・定期預金380万円
■妻/普通・定期預金50万円、投資信託170万円(時価)、株式90万円(時価)

<毎月の貯蓄>
■家計から月10万円
■自動積立月5万円
■教育資金としてつみたてNISA月2万円(2018年3月からスタート)

<住宅ローン>
2年前に都心に中古マンションを購入しリノベーション。リフォーム費用含めかかったお金は7000万円。住宅ローンは5000万円を20年固定金利(0.95%)35年ローンで借入。毎月14万円ずつ返済

「オトナ夫婦」は老後資金をためる時間がない!

FP前野彩さん(以下、前野) 65歳で退職金が入った時点では貯蓄額5000万円なのに、79歳の住宅ローン完済時には1億円の赤字に。そもそも退職して3年後のパパ68歳、子どもがまだ大学生というタイミングで家計が赤字に転落します。この時点でご主人は年金生活で年収200万円、一方のS子さんは無収入。収入が一気に減るのに支出は1000万円超となり、赤字街道まっしぐらというわけです。

相談者S子さん(以下、S子) うわー…(青ざめる)。考えもしなかったです。繰り上げ返済しないとローン完済時にはマイナス1億円なんて。

前野 一応夫婦とも100歳まで生きるという前提でシミュレーションしていますが、そうなると最終的にはマイナス3億円くらいになってしまいますね。共働きってバリバリ働いている現役時代はうまくお金が回るんですよ。でも問題は仕事をリタイアした後。年金生活に入って生活レベルをすぐに落とせるかというと、難しいですよね。

S子 そうですね。いきなり節約、というモードには切り替えられないと思います。

前野 お二人の場合、子どもに一番お金がかかる大学時代と夫婦の老後が重なってしまうのが厳しいところだと思います。パパの年齢が上で、さらにママの出産年齢が遅めの「オトナ夫婦」の場合、子どもの教育にお金をかけ過ぎてしまうと老後の準備をする時間がないんですよ。

S子 分かってはいたんですけど、貯蓄も一応しているし、そんなにぜいたくをしているわけでもないし。クリアできると思っていました。

前野 「子どもに迷惑をかけたくない」って皆さんおっしゃるんですが、老後は就職したわが子に仕送りしてもらうことになる可能性も……。

S子 それだけは避けたい!

前野 「オトナ夫婦」は、子どもの教育費と住宅予算、自分たちの老後資金の準備のバランスが大事です。「とにかく教育費優先」というのであれば、収入を増やすのか、それとも今の生活費を見直すのか、という優先順位を考えていく必要があります。

S子 うーん、ものすごく働くとか、ものすごく節約が必要、というのなら、中学と高校は公立でもいいかもしれないな(笑)。

前野 妻が「バリバリ働いて収入を増やそう!」と思っていたとしても、夫のほうが「仕事で無理するくらいなら、節約したほうがいいんじゃないの?」と逆の意見だったというパターンもあります。まずは夫婦で話し合って優先順位をすり合わせてください。夫婦の価値観や考え方さえ合っていれば、少々大変でも共通の目標のために足並みがそろってきます。ご主人はどんな考え方をされそうですか。

S子 夫のほうが中学から私立にこだわりがあるかも。今住んでいるところの周辺に有名私立があるので、せっかくだから通わせたいという感じかな。子どもが行きたいと言い出したときに、金銭面で可能性を残しておいてあげたいんです。