仕事復帰後は国保になり社会保険料が上がる

前野 S子さんの場合、出産後に健康保険が変わりますね。

S子 フリーランスになってからは、以前勤めていた会社の健保の任意継続制度を使っています。保険料は年間22万円で、高いなあと。

前野 仕事復帰後は国民年金と国民健康保険に保険料などを払います。自治体によってはHP上でシミュレーションできるので、試算してみましょうか。今の収入をキープできるとなると…国民健康保険料は年間29万5000円。国民年金と合計すると年間50万円くらいになります。

S子 えっ。今より7万5000円もアップするんですか!

前野 S子さんの収入からこうした社会保険料や経費を差し引いていくと、復帰後の世帯年収は手取りで1070万円になります。収入から今ためられている貯蓄185万円と支出618万円を差し引くと残りは267万円。お子さんが生まれたら、さらに教育費(保育料)として89万円が出ていきます。そうすると、教育費が増えた段階で計算しても178万円が残ります。これが使途不明金です。

S子 ええーっ! でもこれぐらいは使っているかも……。

前野 これからはこの使途不明金をなくして、目的に合わせて使える家計にしていきましょう。ところで、小学校から大学までの一般的な教育費用はご存じですか?

S子 全然知らないです。

前野 小学校は公立とおっしゃっていましたが、公立小学校は塾代も含めて平均月2万6700円なんです。文部科学省の調査によると、私立中学校だと塾などの費用も入れて平均で月に11万1700円、私立高校は平均月8万3300円ですね。大学は私立文系だと、4年間で417万円というのが学費の平均です(データは前野彩著『教育費&子育て費 賢い家族のお金の新ルール』より)。

S子 ぱっと見た感じ、ウチの家計じゃ無理な気がしてきました(笑)。これじゃ繰り上げ返済ができない……。住宅ローンを組むときに夫と試算してみたのですが、毎年繰り上げ返済していかないと、老後にローンが残っちゃうんですよ。中学から私立は厳しいってことなのかなあ。

このままでは夫79歳、妻72歳で貯蓄がマイナス1億円に!?

前野 大学は海外へ4年間行かせたいということでしたよね。例えば1年間オーストラリアに留学したとすると、学費と生活費を合わせて320万円くらいかかります。4年間留学するとなると約1600万円、留学する国や学校によっては2000万円くらいかかることも。

S子 4年間で2000万円! 夫はそのときもう定年か。教育破綻しちゃいますね……。

前野 中高は私立を優先して、留学を短期間に変更するか、もっと働いて収入を増やすのか、それとも節約するのか。どれを優先するのかは夫婦の価値観や考え方次第ですから、ご夫婦で話し合ってみてください。将来、お子さんが大学生のときに家計がどうなっているかを見てみましょうか。

S子 4年間の海外留学はどう考えても無理なので、大学は私立文系で1年だけ海外留学、というパターンで試算していただけますか。あと私の収入は、50歳ごろから手取り年収200万円くらいで。55歳からは仕事が続けられるか分からないので、収入ゼロでお願いします。

前野 今までの前提条件をすべて入れてシミュレーションしてみました。一番下の貯蓄額の推移を見ると……お二人の現役時代は貯蓄額は順調に増えていきますね。ご主人が定年になり、退職金が入った時点では、貯蓄額は5000万円まで増えています。

S子 意外に増えてる(ニコニコ)。あ、でもこれはローンを繰り上げ返済しない場合ですね。

前野 そう、ぬか喜びさせてごめんなさい。このままいくとご主人が79歳、S子さんが72歳のときにローンは完済できるのですが、貯蓄は1億円近い赤字になっていますね。

S子 えーっ!! マイナス1億円!?

――「解決編」に続く!

(取材・文/澤田聡子 イラスト/エイイチ イメージ写真/鈴木愛子)

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