<小島慶子さんの回答>

柳は放っておくべし

A. お気持ち、お察し致します。これは反省を込めて言うことなのですが、子どもの手が離れれば離れるほど、夫の所業が目につくようになるものなのです。

 それはですねえ、夫がしょうもないからというより、自分の全センサーが育児仕様になっているからなのですね

 思い出してください。子どもが小さかったころ、私たちは一体どれほど神経を張り詰めていろんなものを警戒していたでしょうか。頭を打たないか、何かを飲み込まないか、車にひかれないか、迷子にならないか。さらには鼻水や湿疹やウンチにまで目を配って、子どもの状態を把握していましたよね。

 子どもが何を言いたいのかも、全身を耳にして聞き取っていました。特に母親は子どもと接している時間も長いので、相手の言動から情報を収集するセンサーが半端ないのです。お子さんが小学生になって多少楽になったからといって、子育ては続行中ですから、このセンサーの感度が下がるわけではありません。

 で、そこへまんまと引っかかってくるのが夫の言動なのですね。「え?」って必ず聞き返すとか、ドカ食いするとか。

 未熟な人に対しては、助けが必要ですからセンサーが反応したらすぐに出動します。でも夫は、育児のパートナーであるべきはずの人です。妻としては、なんだっておまえに反応しなくちゃいけないんだよといういら立ちを禁じ得ません

 だから「え?」と言われるたびにカチンときて「もういいよ」になるんですね。

 わが家の庭には不審者よけの強力なセンサーライトがあるんですが、風の強い日なんかには、柳の葉っぱにまでいちいち反応して点灯するので、思わず「柳は放っておけ!」と言いたくなります。それとおんなじですね。夫は柳の葉っぱ同様、ただ風に吹かれているだけなんですが、妻のセンサーが高機能過ぎて、細かく反応しちゃうんです。

 100年人生なので早めに軌道修正したいというお心がけ、建設的で素晴らしいです。でも、我慢はオススメしません。我慢すると恨みがたまって、あとで復讐したくなってしまいますから…

 お子さんが高校受験なんかでまた手がかかるようになるまで、あと4年ぐらいでしょうか。ここを乗り切るために、いっそ犬でも飼ってみるのはいかがでしょう。子育てセンサーを振り向ける対象ができますし、犬育てという体験を共有することで、戦友である夫婦の絆もいっそう強まるかもしれませんよ。

夫の言動が気になるのは、自分の全センサーが育児仕様になっているから

(イラスト/ヤギワタル 写真/鈴木愛子)