子どもたちは「寝た子」じゃないから、自分を守る方法を教える必要がある

 小学校高学年になるころには、体は第二次性徴が始まっています。生理が始まれば、体はいつでも妊娠準備OKな状態になっているのです。自分を大切にするための方法を、「まだ早い」と教えないのは、子どもを守ることにはならないでしょう。いつから、どんなことから、子どもには伝えたらいいのでしょう。

 「よく『寝た子を起こすようなことを』という言い方をされますが、子どもたちは寝ていませんよ。体はどんどん成長しているわけですし、変化していく体に興味いっぱいです。むしろ、本当に寝ている子がいたとしたら、寝かせたままでいいんですか?と聞きたいです。寝ていたら起こして教えてあげなくて大丈夫ですか?と。それは、学校も含めての大人の役割ではないでしょうか」

 それでも、まだ小学校中学年くらいでは、そういう話をするのは早いと思っている保護者は少なくないのかもしれません。

 「性教育は段階を踏んで、知っていってもらわないと難しいですね。中学生になったからいきなり『さあ性の話をしよう』なんて言っても無理な話です。例えば小学校低学年から、プライベートゾーン(男女ともに外性器周辺やおしり、女性の胸など)とはなにか、なぜ他の人に勝手に触らせてはいけないのか、生理の仕組み、そして『私たちはどこからやってきたのか』、ということを、保健体育だけではなく、生活科、理科、道徳などで複合的に少しずつ積み上げられることが理想でしょうね」

 「性の話をそんなに小さいうちからなんて、と思われるかもしれませんが、子どもには体に興味を持つ時期が絶対にあるんです。生徒ではありませんが、私が知っている子どもは幼児期に『男の子はパパから、女の子はママから生まれる』と真剣に信じていて、『男の人は、赤ちゃん産むときおちんちん痛くないのかなあ』と発言したことがあります。やはり子どもなりに、おちんちんは特別なところだと気づいているんですよね。こういうタイミングで正しいことを教えてあげることもできると思うんです」

 「子どもは性的なことが特別であることは、幼児期から気付いています。そのときから少しずつ、自然に教えてあげられるといいと思っています」

 性的なことは、本当は「いやらしいこと」「うしろめたいこと」ではありません。心も体も自分らしく生きるということそのもののはずです。だから、性を大切に考えることは、安心して生きていくために自分を大切にする手段でもあるのです。子どもたちを自分で自分を守ることができ、自分らしく生きられる人に育てるために、性教育は必要だと、筆者は思います。

 「女子力」の基盤となるのも、本当はメイクでもファッションでもなく、自分で自分の体を大切にする力のはずです。自分らしく生きていなければ、どんなに外側を飾っても、それは「かわいい」にはつながらないと知ることが、女の子たちにとっては大切なこととなるでしょう。

 髙橋さんのお話から、性教育に関して学校では生物学的な知識は教えても、性との向き合い方については教えていないことが分かりました。「学校で聞いているんじゃないの?」という淡い期待すらできない私たちは、体のこと、性のことを子どもにどう伝えていったらいいでしょう。

 果たして大人たち自身、子どもに聞かれて答えられるくらい、自分の体の仕組みをしっかり理解しているでしょうか。次回では、まず生理の仕組みから、もう一度子どもたちとおさらいしてみたいと思います。

(イメージ写真/iStock)

関川香織
関川香織 出産・育児ジャーナリスト。1967年生まれ。妊娠・出産・育児のジャンルで書籍・雑誌の編集に20年以上にわたり長く携わってきた。著書に「生理のコト 体のコト 恋のコト 全部知って JC女子力向上BOOK 」(秀和システム)。大学生の息子がいる。