学校では、性教育はしていないという現実

 女の子たちが、自分がなりたい将来のためには、自分の体を守ることは必須です。そのために、まずは体のことや性についての知識が必要です。将来の希望をつぶしてしまう経験につながってしまうようなセックスのこと、避妊の仕方などの知識は、子どもたちはいったいどこで得ているのでしょう。学校ではどこまで教えてくれているのか、教えてもらっていないのか。

 「はっきり言って、今の学校では教えていない、と言ってよいでしょう。生殖に関する解剖生理学の部分(月経や妊娠の仕組み、性感染症などについて)は保健体育の中で教えていますが、どうやって精子と卵子が出会うことになるのかという性交については教えることにはなっていません。さらにいえば、性とどう向き合っていくのか、相手にどんなことをしてはいけないのかといったことを教えるのか、教えないのかという『性教育に関する基準』はありません」

 「個々の学校の方針で、課外授業などで熱意をもって教えているケースとか、PTAで勉強会や講演会を開いたりといったケースはあるかもしれませんが、今現在、学校側での『性について教えようとして作られた系統的な指導の計画』というものはないのです」

 「保護者としては、『どこかで聞いているでしょ』と思っているかもしれませんが、『どこか』ってどこなんでしょう? 少なくとも中学校ではないし、小学校でもないです。小学校時代は『まだ早い』といわれ、いつのまにか『中学生にもなれば、もう知っているでしょ?』という扱いをされているのが子どもたちの実情です。子どもたちは、正しいことを系統立てて教えられてはいません」

 「現状として学校で教えてもらえないとなれば、家庭でということになりますが、保護者自身の性に関する知識もデコボコというかバラバラですよね。今の大人の世代も、統一されたカリキュラムのもとに性のことを教えられてきてはいませんから。性のことについて自分で調べたり学んでしっかり考えている人もいるし、断片的で偏った情報しか持たないままの人もいるし、関心すらなくて語るべき言葉を持たない人もいます。学校では教えてもらわず、教えてくれるはずの大人たちの性についての認識がまちまちなら、子どもたちの性に関する知識や考え方は、さらにバラバラとなります」

 生殖に関わる知識を教えている、ということと、将来役に立つ性の知識を身に付けさせようとしている、ということは別のこと。実際の人生のために大切な情報が、今、子どもたちはどこからも伝えられていない、ということになるのです。

子どもたちが集めている性の知識は、断片的なものばかり

 では、子どもたちはどこでそうした知識を得ているのでしょうか。今は圧倒的にインターネット経由だと思いますが……。

 「塾通いのためにスマホを持っている子どもも少なくありませんよね。ペアレンタルコントロールを設定していても、アダルトサイトの広告が表示されてしまう場合もあるし、さらには子ども向けに『なりすまし』をしているような悪質なコンテンツもあります」

 「子どもたちの性に関する情報源は、インターネット以外では今も昔もそんなに変わりはありません。ティーン向けの雑誌の企画やマンガ、テレビドラマからの場合もあるし、年上のきょうだいがいる友達が情報源の場合もあります。でも、こうした知識はすべて断片的なものでしかありません。正しい知識も混ざっているかもしれませんが、そこに行き当たるのは運でしかないでしょう」

 「子どもからすると、いつか大人から本当のことを教えてもらえるものと思っていたかもしれませんね。でも実際は、子どもたちは知識の断片を集めているだけです」

 知識の断片を集めているというのは、例えばコンドームというものは妊娠しないためにあるということは情報として入ってくるけれど、正しい使い方は知らない、射精の瞬間につければ妊娠しないのかといった間違った情報も、その「断片」のひとつです。アダルト動画に登場するような、女性がいやがっているのに強要するようなセックスのしかたも「断片的な情報」。それが断片ではなく一般的なことだと思われたら、それはとても危険なことになります。

 「学校教育では生殖についての解剖学的な部分や、月経が起こる仕組みについては教えていますが 、性交については触れないんです。意識の高い先生のいる学校では系統立てて教えているかもしれないけれど、そうじゃない学校ではまともに取り上げない。性教育の指導要領はないんです。だから学校ごとに格差ができてしまっています」

 「学校ごとにバラツキがあって、きちんと教える学校にいた子だけが、性に関する必要な知識を持っている。これでは、教えたことにはならないでしょう。だって、自分の恋愛対象となる、もっといえばセックスのパートナーとなる相手が、どういう常識を持ち合わせている人なのか分からない、ということなんですから。そういう目線で見ると、本当に個人差が広がり過ぎています」

 学校では、卵子や精子の成り立ちや妊娠の仕組みは教えているけれど、それと性教育はまた別のもの。性感染症については、感染経路や症状については教えるけれど、コンドームの使い方を教えるかどうかについては指導要領にないということ。それは、インフルエンザにたとえれば、インフルエンザウイルスの特性やかかったときの症状は教えているけれど、生活の中でどうしたら予防ができるか、手の洗い方や、マスクを使用することについては教えていないのと同じことになるわけです。

 学校では、セックスしたら妊娠するということしか教えていない。ということは、セックスにつながるような行為を拒否する方法も、拒否していいかどうかすら、分からないままということになってしまいます。それは、自分の心と体を大切に守る方法を、学校では教えていないということではないでしょうか。

イメージ写真