今、初経の平均年齢は12歳ごろです。体形が女らしくなって、生理が始まり、いよいよ思春期のスタートに立つわが子。親は「○○くんが好きー」と素直に打ち明けてくれた時期を懐かしく感じるようになるかもしれませんね。
思春期の入り口にいる女の子は、大人が想像する以上に「女子力」という言葉に敏感です。どうしたらかわいくなれるのか、メイクは? 服のコーディネートは? ダイエットは? そんなことに常にアンテナを張っています。「小学生で!?」と思った人や「うちの子は違う」と思う人もいるかもしれませんね、でも、そう見えないようにしているだけで、心の中では興味津々なのです。本当にオクテな子だったとしても、友達との会話はそういった内容が入って来ているはずです。
彼女たち自身としては異性に向けてアピールするための「女子力」ではなく、友達同士での「かわいい」の追求かもしれません。でも、そのほんのすぐ先には、セックスを含む恋愛が待っていることは確かです。
そんな思春期の始まりに、女親としては娘へ何をどう伝えていけばよいのでしょうか。この連載ではそのヒントを探るべく、出産・育児ジャーナリストの関川香織さんが、性教育、思春期を取り巻く専門家たちに話を聞き、レポートします。
第1回目は、約30年にわたり公立中学校の養護教諭として思春期の子どもたちと向き合っている髙橋祥子さんをゲストに迎えました。
養護教諭
15歳未満の妊娠は、よその世界の話ではない
生理が始まる平均の12歳は、小学生と中学生の過渡期。10代前半のこの時期は、親としてはまだ子どもとして扱っていたい気持ちはあっても、本人たちは既に大人の世界の入り口に立っています。
実際に、2013年の統計では、15歳以下の出産報告数は51件、中絶数は318件。合計すると369人の女の子が妊娠を経験したことになります。この数が多いか少ないかはともかく、実際に起こっていることは確かです。
実際に、生徒から「妊娠したかもしれない」「どうしよう?」という相談も、これまでに受けてきたことがある髙橋さんはこう話してくれました。
「私は中学校の保健室で働いて30年近くになります。これからお話することは、統計をとったデータに基づいてのことではなく、養護教諭として見てきたこと、感じてきたこととして聞いてください」
「妊娠したかもと心配して相談にくるケースは、最近すごく増えているといったことはありませんが、確かにあります。そのほとんどは、大丈夫だったというケースです。しかし、養護教諭同士で情報交換をするときに、中学生が妊娠した事例を聞くことはあります」
「中学生の妊娠には、様々なパターンがあります。子ども同士の性交渉で妊娠した場合もあるし、性的虐待や事故によるものもあるでしょう。私が相談を受けていなくて、誰も気づかないまま妊娠の心配をしていたり、実際に妊娠したりといったこともありえます」
「子どもたちの妊娠について、ひと世代前と違うと感じるのは、保護者に相談しようと考える子どもが多くなっていること。『親にだけは、絶対言えない』と思い込んでいた一世代前とは違う点です。それは、保護者に妊娠したかもと話しても『勘当される』ようなことにはならないケースが多くなったから、といえるかもしれません。もちろん、厳格な保護者もいますよ。でもフランクな親子関係が多くなったとは感じています」
「親の反応も、かつてのように『産むなんて絶対にありえない』ということばかりではなくなっていると思います。保護者も学校も、必ずしも中絶だけを前提とはしていないし、親が絶対に許さないということもない。そういう時代なのでしょう。だからといって保護者に理解があるということではありません」
「とはいっても、もし妊娠していても産まないと考えている子は、今も多いです。高校進学を考えている子は、産むことを選択しない、ということもいえます。だからといって、高校進学を考えているような子でも『妊娠したかも』の心配が全くないというわけではありません」