人手不足と生産性向上の必要性から、「働き方改革」が進んでいます。この4月からは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が順次施行され、効率的な働き方がさらに求められるようになります。日本の働き方改革はまだまだ過渡期。多くの企業が専門家や先進企業の例を参考に、自社の改革を模索している段階です。そこで、第3回では長時間労働に先進的に取り組んできたビースタイルで業務改革を担当した人事担当者と、現場スタッフに、労働時間削減のために有効だったという自社の研修について聞きました。

【脱! ざんねんな働き方改革特集】
(1) 働き方改革は8割浸透 でも「ざんねん」も満載
(2) ツールや制度導入だけではダメ 仕組み変える意識で
(3) 長時間労働対策「21時になったら電気消す」は×? ←今回はココ 
(4) 人材育成「新人は気合で覚える」は× 解決策は?
(5) 男性育休「2~3日有休消化」では単なるお仕事体験
(6) 健康経営「休養室は宿直室」は× 眠りで生産性向上 

業務の効率化に手を付けずに「21時に帰れ」はざんねん型

ここが残念!
業務改革には手を付けず、一斉退社・電気・PCシャットダウン
残業代が減った分へのフォローはなし
会社が求める新しい人材像を示していない、そうなるための支援がない

 「働き方改革」というと真っ先に上がるのが「長時間労働対策」「残業時間削減」です。そのためによく聞く施策が「ノー残業デー」や「21時一斉退社・電気・PCシャットダウン」といった、「みんな一緒に」というもの。ここで「ざんねん」なのが、働き方改革の本来の目的である業務の効率化に手を付けず、「早く帰ろう」の掛け声だけで終わっている点です。これでは、第1回のアンケート回答にあるように帰宅後の深夜や休日に持ち帰り仕事をするなど、数字に表れない「残業」が生まれてしまいます。また、給与体系の見直しをせず、残業だけを減らせば、生活給に影響が出ることもあります。

「総労働時間削減」に先駆け、個人の働き方を改革していたビースタイル

 派遣・紹介サービスを手掛けるビースタイルも2002年の創業時、夜型の残業が多い会社でした。営業担当者が夜になってから戻って来て、21時ごろから「さぁ打ち合わせ」ということも珍しくなかったそうです。しかし、多様な人材に活躍してもらうために、2016年に働き方改革に着手し、総労働時間を削減するプロジェクトをスタートさせました。トップダウンで経営層の強い意志を伝えると同時に、様々な施策を並行して行った結果、2018年11月の平均残業時間はわずか18時間にまで減っています。同社の働き方改革が現場にしっかりと根付き、当たり前のものになっていることが分かります。

ビースタイルの「働き方改革」総労働時間削減プロジェクトの主な内容

基幹システムを21時で使用停止
22時にPCを強制シャットダウン(リモートワークも同様)
・時差出勤の選択時間の幅を拡大
・社内表彰の選考をする際に残業時間の要素を組み込む
・月の残業時間が40時間を超える社員を執行役員会議で共有し改善を促進
・半月経った時点で労働時間が長い社員についてアラートをあげる
余暇時間を能力開発につなげるたの研修補助・支援を行う

 残業が当たり前だったビースタイルの業務改善に一役買ったのがプロジェクトがスタートする前の2012年から行われていた「タスク管理研修」です。これはタスクの管理法やパソコンの使い方、メールの管理法、効率よく仕事を進めるための考え方を教える、同社オリジナルの1時間半の研修。もともとは同社執行役員で人事開発部部長の百瀬愛子さんが実行していた仕事術で、2018年までは中途入社社員を含む、全社員の受講が必須でした。その研修によって、現場スタッフの働き方はどのように変化したのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 自分のゴールを決めて取り組む「タスク管理研修」
● タスク管理、メール、ショートカットキーなど業務ノウハウを細かく教える
● 常に時間を意識して働くことで、タスクに対する見積もりが立てられるようになる
● 早く仕事をするために「心の整え方」を最も重視
● 優れたタイピング力が企業の価値も高めることにつながる
● 1日4回の振り返りでその日のタスクを見直し、残業減に
● 藤田さんが1日に4回行う「振り返り」の内容
● 振り返りは反省だけでない。成功事案の振り返りは次の仕事に生かせる