人手不足と生産性向上の必要性から、「働き方改革」が進んでいます。この4月からは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が順次施行され、効率的な働き方がさらに求められるようになります。しかし、前回紹介したアンケート結果では、読者の職場の8割が「働き方改革」に着手しているものの、その効果を感じているのは過半数未満ということが見えてきました。

2回目の今回は、アンケート結果から見えてきた「これは残念」という部分を改善するためにはどうすればいいかを、専門家にアドバイスしてもらいます。

【脱! ざんねんな働き方改革】
(1) 働き方改革は8割浸透 でも「ざんねん」も満載
(2) ツールや制度導入だけではダメ 仕組み変える意識で ←今回はココ
(3) 長時間労働対策「21時になったら電気消す」は×?
(4) 人材育成「新人は気合で覚える」は× 解決策は?
(5) 男性育休「2~3日有休消化」では単なるお仕事体験
(6) 健康経営「休養室は宿直室」は× 眠りで生産性向上 

   
こんな働き方改革は残念!

ここが残念!
業績が落ちるのに目をつぶっている
→生産性をアップさせるのが「働き方改革」

ここが残念!
月の残業時間は減ったからOK
→総量ではなく、メリハリを見る

ここが残念!
営業など、お客さんがいて運用できない部署があるのはしょうがない
→取引先などに理解を求めて残業削減をする会社もある

 

 多くの企業でイクボスセミナーを行うNPO法人ファザーリング・ジャパン理事で、東レ経営研究所・上席シニアコンサルタントの塚越学さん。これまでの経験で見えてきた「残念な働き方改革・四天王」は以下だといいます。

塚越さんによる「残念な働き方改革・四天王」

(1) 残業時間の削減
(2) 働く場所(テレワーク、在宅ワーク、サテライトオフィスなど)の多様性
(3) 働く時間(フレックス、短時間勤務、時差勤務など)の柔軟性
(4) ITツール(スマホ、タブレット端末など)の導入

NPOファザーリング・ジャパン理事、東レ経営研究所・上席シニアコンサルタントの塚越学さん
NPOファザーリング・ジャパン理事、東レ経営研究所・上席シニアコンサルタントの塚越学さん

 どれも企業の働き方改革には取り入れられている項目です。どこが残念なのでしょうか?

 「それだけに特化して『働き方改革をやっている』と満足してしまう企業が多いからです。企業における働き方改革は『生産性向上』改革と『コミュニケーション改革』の両輪が必要なのですが、(1)~(4)だけをやって、「やった」というのが残念なのです」(塚越さん)

 前回のアンケート結果でも、多くの職場で「労働時間の削減」やテレワークやフレックスタイムの導入といった制度を導入していることが分かりました。

 一方で、「そのために生産性が下がっている」「生産性を考えていない」という声もありました。

生産性を考えていない

「働き方改革と言っている割には、業務効率を考える上長があまりいない」(46歳、女性、通信サービス、企画・広報・マーケティング部門)
「今よりも全体で成果やGDPを伸ばしていくことが目的なのに、テレワークなどの一部手段が目的と化している感じがしている」(51歳、男性、電子・電気機器、企画・広報・マーケティング部門)
「形ばかりで、中身の生産性が改善されていない。定時勤務を推進した結果、部内の業績が下がった」(45歳、男性、コンサルティング、専門職)

 「働き方改革は、生産性アップがベースにあります。結果的に業績が下がる働き方改革は、残念な働き方改革です」と塚越さんは指摘します。

 そして、働き方改革にブレーキをかける層の存在を指摘する声もありました。

働き方改革にブレーキをかける層がいる

「女性は増えたものの昭和の男性中心の会社で働き方を変えなければならないという腹落ち感は部長以上の層はほぼないと思われます」(36歳、女性、製造、人事・労務部門)
役員層の意識が変わらないため、制度は整っても活用されていない。役員の仕事のやり方を変えないと、結局いつまででも、休日も働く部下が必要とされる構造が変わらない」(35歳、女性、自動車・輸送機器、技術・研究開発部門)
「ダイバーシティーや働き方改革を推奨しているが、過去に作った就業規定はそのままで何かが起こると就業規定を持ち出されるものだから、自由度が低くてみんなが新しい試みに踏み出すことにしり込みしている」(46歳、男性、自動車・輸送機器、技術・研究開発部門)
「テレワーク、フレックスなどを導入しても、上の世代が活用しない。あるいは夕方をすぎて仕事関連の指示をしてくるなど、正直昔ながらの旧体質が抜けていない」(36歳、女性、商社、販売・営業部門)

 いくらトップが働き方改革を推進しようとしても、なかなか浸透せず頑固でかたくな、人呼んで「粘土層」といわれる層がそれをストップさせることもあります。「現場の部課長クラスが抵抗勢力となることは見られます。トップダウンで進めようとしても、そうした分厚い粘土層が浸透をはばんでしまうというケースは少なくありません」(塚越さん)

 では、どうすればいいのでしょう。

<次のページからの内容>
●部下からのアプローチでイクボス推進
●コミュニケーション改革の武器
●生活改革まで見据える
●根性で頑張る以外の意識改革
●選択肢は人それぞれ、「横並び」はうまくいかない