自身の子が小学校4年生のときから3年間、PTA会長を務めたフリーライターの杉江松恋さん。その経験をつづった書籍『ある日うっかりPTA』がじわじわと話題になっています。前編では学童の役員経験から感じたPTAとの溝や地域住民とのラジオ体操を巡る攻防、それまでPTAがやっていた仕事を外注に踏み切ったエピソードをお話しいただきました。後編では、杉江さんが考えるPTAの課題や問題点、そして「PTA分業制」という斬新な意見も飛び出しました。

■「上」の記事
フリーランスのパパがPTA会長をやって分かったこと

「夜ならできる」と声を上げたらいい

日経DUAL編集部(以下、――) 仕事をしている人にとって、一番のネックは昼間に動きづらいことかと思います。夜間に学校が利用できないなど、夜に会合を開けない理由はあるのでしょうか。

杉江松恋さん(以下、敬称略) 厳密に言うと、児童が在校している時間帯は学校の管理者である校長が見守らなくてはいけないのですが、それ以外の時間は保護者が借りることは可能です。学校でお泊まり会を検討したこともありますし、やってやれないことはないと分かっています。ただ、施錠や火の元など、借りた側の責任問題が発生します。それでも夜に学校を借りて使いたいという、一致団結したエネルギーが必要になりますね。それぞれのPTAによっても違うと思いますが、前例を覆してまでイレギュラーケースに対応するという議論がされにくい環境にあるとは思います。

―― 役員の中でも意見の食い違いがあったりするわけですよね。

杉江 でも、2クラス×6で12人役員が選ばれたとして、その中の1人でも2人でも「夜の会合にしたい」と声を上げる人がいたら、検討したほうがいいと思うんですよ。理想論ではなくて、そういう弾力性のある運営をしていたほうが、結局みんながラクになる。

―― 共働き世帯も増え、PTAも変わらざるを得ないということでしょうか。役員をやりたくないと誰もが顔を伏せている中で、「私、夜ならできるのに」と考えている人も少なくない気がします。

杉江 声を上げるのは大事だと思います。「他のクラスは昼の会合だけれど、我が6年1組は役員の都合で夜の会合にしましょう」というのは不可能ではないし、今後やっていくべきでしょうね。あらかじめ決められたルールを全員が守るのがPTAの基本ではなく、当事者である保護者のやりたいことを組み上げて全体に通すのがPTAの役割ではないかと思います。

杉江松恋さん
杉江松恋さん