キッズデザイン賞は、賞の理念に賛同する企業や団体から成るNPOキッズデザイン協議会によって運営されています。発足から10年が経ち、協議会の目的と行動指針をまとめた「キッズデザイン宣言」が新たに発表されました。今回は、日経DUALの羽生編集長が司会を務め、協議会メンバーらがキッズデザイン賞の意義と今後の可能性について話し合ったトークセッション「キッズデザイン・ラウンドテーブル:『キッズデザイン宣言』への取り組みと企業の役割」の様子を紹介します。

【キッズデザイン賞 特集】
(1)  「第11回キッズデザイン賞」受賞作品リポート 第1弾
(2) 「第11回キッズデザイン賞」受賞作品リポート 第2弾
(3) デザインの力で「子どもは社会の宝」を実現する ←今回はココ

【登壇者】
キッズデザイン協議会会長 山本正己氏(富士通 取締役会長)
同 副会長 伊久哲夫氏(積水ハウス 取締役副社長)
経済産業省 商務・サービスグループ クールジャパン政策課長 清水幹治氏
SCSK 人事グループ 副グループ長 小林良成氏
【進行サポート】
キッズデザイン協議会理事 高橋義則氏(ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役社長)
【司会】
日経DUAL編集長 羽生祥子

(2017年12月時点)

10年の間に社会的な広がりを持った「キッズデザイン」

日経DUAL羽生祥子編集長(以下、―) 日経DUALでは、「働きながら子育てをすることが普通になる社会をどうやってつくれるか」ということを日々考え、情報発信をしています。今日は多くの読者の声を代表して、また私自身も小学生2人の母親として、色々お話を伺っていきたいと思います。

 キッズデザイン賞は次回で12回目を迎えるということですが、このほど新たな宣言をされたと聞きました。これまでの10年の歩みの中でどんな変化があったのか、そしてこれからは何を目指していくのか。山本会長、方針をお聞かせください。

山本正己氏(以下、山本) キッズデザイン協議会は2006年5月15日に発足しました。最初は不慮の事故による子どもの犠牲があってはならないということで、子どもの安心・安全のために貢献できるデザインはどうあるべきかということを主眼としていました。

 その後世の中が大きく変化するとともに、「子どもは社会の宝である」ということが国民の皆さんの中でコンセンサスとして捉えられるようになってきました。キッズデザインも従来の「子どもたちの安心・安全に貢献するデザイン」に加えて、「子どもの創造性と未来を拓くデザイン」、さらには、「子どもを産み育てやすい環境をつくるデザイン」というように、ミッションが大きく広がってきました。

 そこで10年という節目を迎えた今回、「キッズデザイン宣言」を発表しました(下記参照)。これからの10年は、日本の大きな課題である少子化に対する様々な対策に正面から向き合うべく、皆さんのご支援を賜りたいと思っている次第です。

 キッズデザインというと、どうしても「商品のこのデザインが子どもに安全」といった商品に寄ったイメージがありますが、新宣言の10項目の冒頭には即物的なこととは正反対の「喜び」「豊かな時間」といった、非常に抽象的な言葉が連なっていますね。

山本 はい。10年間かけて我々が磨いてきたものを表現した内容になっています。デザインを単なる商品やサービスではなく、社会全体のしくみとして考える。子どもは社会の宝であり、未来であるということを実現できる環境をつくっていかなければいけない。それがデザインだと我々は考えています。

キッズデザイン宣言
すべての子どもは社会の宝であり、未来そのものです。
キッズデザイン協議会は社会の変化を敏感にとらえ、
さまざまなステークホルダーとともにオープンイノベーションを起こし、
その未来が持続的で明るいものであるよう行動します。

●出産、育児と働くことがどちらも喜びであるよう、考え、実践します。
●子どもと過ごす時間が豊かなものであるよう、行動します。
●子育てに関する情報へのアクセスをわかりやすく、容易にします。
●子どもとともにいつでも、どこでも外出したくなる環境をつくります。
●子育てする人すべてが交流と支援を享受できる場づくりをサポートします。
●コミュニティが支える子育ての大切さを共有し、その支援を行います。
●地域と社会の若者や高齢者と、子どもが接する機会を増やします。
●子どもにとっての遊びと学びの普遍と変化を研究し、開発し、実践します。
●子どもが自発的、継続的に体験、経験を積める機会をたくさんつくります。
●不慮の事故による子どもの犠牲をゼロにする努力を継続します。