企業と自治体の連携を促し、地域に根差した取り組みに期待

羽生 ここまで企業の話をしてきましたが、山本会長、キッズデザイン協議会には企業だけではなく地域との活動もあるんですよね。

山本 子どもを中心とした社会を考えたときに、国や自治体が重要な役割を担うということで、準会員という形で自治体の皆さんにも参加していただいています。企業と自治体がタイアップして、色々な取り組みを行うことを重視しています。

清水 一つ、政府の取り組みをご紹介したいと思います。各地域で教育界と産業界が話し合い、独自の休日を設定する「キッズウィーク」というもので、早ければ2018年の4月1日にスタート予定です。夏休みなどの一部を、例えば地元のお祭りに合わせた別の時期に振り替えて、親子が触れ合う機会にします。

 親子で一緒に出かけたりすることになると、休日を分散させることで観光需要が平準化されるといった産業界のメリットもあります。キッズデザイン的なオープンイノベーションの場として、それぞれの地域の魅力を高めることにもつながっていけばと思っています。

 高橋理事、企業と街の連携でよくあるのが、ここからここまでは企業がやることですが、ここから先は地域でどうにかしてくださいといった「線引き」です。逆もありますが、そういうところをつなぐ意味でもキッズデザインというキーワードは非常に重要かなと思います。

高橋義則氏 キッズデザイン協議会の会員は大手企業が非常に多く、全国各地に支社や営業所をお持ちですが、地域から見るとそうした拠点は地域人の一画を占めているわけです。例えば有事の際、近くにある工場や会社がどうやって地域の子どもたちを救ってくれるのかということも当然あります。逆に企業サイドもCSR、CSVといった活動の中で、地域と一緒にやるような取り組みもだいぶ増えていると思います。

 そういう意味では、一市民、一地域法人という分け方ではなく、子どもを大切に育てる、子どもの発達や安心、安全に貢献するという意味で、まさにオープンイノベーションが行われていると感じています。キッズデザインでも、最近は自治体が企業や大学と組み、連名で応募されるケースが非常に多くなっています。ただ一方で、地域サイドは「大手企業さんとの組み方がよく分からない」というケースも意外と多いんです。

 キッズデザイン協議会には多種多様な業種が集まり、全国各地に受賞者がいます。今後はそうした方々と自治体がうまく組めるスキームを作っていく必要があるのではないかと思っています。

 子育てというのは今までは家庭の中の小さなマターでしたが、これからは国と企業と地域と家庭、すべてにとって成長につながる最重要課題であるということを痛感しています。そういった環境の中で、先進的な素晴らしい取り組みをどんどん表彰していくという協議会ですので、次の10年も常に社会に一石を投じるような「デザイン」を問う存在であることを期待しています。

キッズデザインを通じた「オープンイノベーションの可能性」について話し合った
キッズデザインを通じた「オープンイノベーションの可能性」について話し合った

(文/日経DUAL編集部 谷口絵美 写真/花井智子)