キッズデザインは働き方改革のキーワードにも

羽生 清水課長、今の伊久副会長のお話は働き方改革というキーワードにつながってくると思います。働き方改革は、今や国がかなり熱く推進していると思いますが、企業とはどのように連携しているのでしょうか。

清水幹治氏(以下、清水) 企業の皆様方、働いていらっしゃる方々のご理解を得て、成長に向けた新しい課題を克服すべく取り組んでいるところです。

 キッズデザイン賞の受賞企業の事例を見ると、働き方改革にもつながるイノベーティブな取り組みがたくさんなされています。制度本体の部分は政府や経産省の担当部局がしっかりと進めていますが、我々もキッズデザインを通じて「働き方改革というのはこういうところからも主体的に進めていかなければいけないんだな」というのを改めて認識しているところです。

 働き方改革について企業の経営者の方々とお話ししていると、「それ(働き方改革)って、やるともうかるの?」という本音が聞こえてきます。そうした中で、率先して改革を進めていらっしゃるのがSCSKさん。システム構築の最大手で、いい決算を出されているのは周知の通りです。聞くところによると、会社のイノベーションを社員のイノベーションにつなげるかなり思い切った制度があるとか。「残業しなくても残業代がもらえる」というのは本当ですか?

小林良成氏(以下、小林) 本当かどうかと言えば、本当です(笑)。ITシステム業界は長時間労働の代表的な職種だと思われていますが、我々もかつてはそうでした。2013年に全社で働き方を見直そうという動きが始まり、現在は残業時間が全社平均で月18時間、有給休暇の取得率も約95%となっています。残業が減ると浮いた残業代が発生しますので、それを社員に還元することをコンセプトに活動しています。

 残業代が生活費に組み込まれている場合、残業を減らすと生活レベルを下げなければいけなくなるため、なかなか減らす気になれないものです。そういう心持ちを払拭しようということで、現在は残業をする、しないにかかわらず、固定の残業代を支給する制度を設けています。

 SCSKさんの場合はキッズに特化しているものだけではないと思いますが、介護支援やダイバーシティも含めた包括的な取り組みをされていて、実績も出されているので、いいロールモデルになるのではないかと思っています。

 これから働き方改革、もしくはキッズデザインを経営の方針の中に入れていきたいという企業の経営層の皆様に、コツなどを教えていただけますでしょうか。

小林 コツと言えるようなものはないと思いますが……ただ私どもは、ごく当たり前のことを地道にやっています。経営トップが号令をかけるだけではなく、役員や部長、課長のレベルまで、有限な時間の中でいかに効率のよい仕事をするかという意識を共有する。有休を年20日取るのは義務であり、残業時間を月20時間以内にマネジメントして仕事をこなすというのがマネジャーの能力だという言い方をしています。

 やるという強い意志を持っていただければ、実現できるかなというのが我々の実感です。なかなか進まない時期もありますが、諦めずにやり続けることが大事なのではと思います。

「キッズデザイン賞は、社会に一石を投じるような“デザイン”を表彰するアワードであって欲しい」(日経DUAL羽生祥子編集長)
「キッズデザイン賞は、社会に一石を投じるような“デザイン”を表彰するアワードであって欲しい」(日経DUAL羽生祥子編集長)