協議会がオープンイノベーションのプラットフォームに

羽生 次に伊久副会長に、このセッションの副題にある「企業としての役割」についてお伺いします。キッズデザイン協議会には産業も分野も異なる約70社が参加されていますが、具体的に何ができるのかという点についてお聞かせください。

伊久哲夫氏(以下、伊久) 一番大事なことは、今の社会が抱える課題を解決していく中で「キッズデザイン」という一つの視点を提示することだと思っています。単発のプロダクトやサービスでは課題解決に向かうアクションは限られる、だからこそ協議会のメンバーが業種や業界を超えて協力することによって、新たな価値が生まれるのではないか。いわゆるオープンイノベーションです。それはひいては、各事業者のチャンスにもつながるのではないかと思います。

 私も日々企業の取材を通して、オープンイノベーションという言葉をよく耳にします。各社とも関心は高いのですが、実現するには当然ながら情熱も人的リソースも、コストもかかると思います。キッズデザイン賞の視点で、いい取り組みだったと思う事例を教えていただけますか。

伊久 私は住宅メーカーにいますので、その立場からお話ししますね。我々はキッズデザイン宣言の中にある「すべての子どもは社会の宝であり、未来そのものである」という考えを企業活動そのものに取り入れ、様々なステークホルダーのメリットを最大化することを日常的に意識しています。

 当社でも女性社員の数が非常に増えており、女性が働きやすい職場づくりは事業継続そのものであると言えます。例えば技術部門の女性にとって一番遠い職場が現場監理業務ですが、これからはそういうところにもどんどん女性が出ていけるようにする必要がある。そこで課題解決の一つの取り組みとして、女性が使いやすいトイレを作りました。開発に当たっては女子社員やパートナー企業が参加する、いわゆるオープンイノベーションという形になりました。

 女性が現場監理業務に入りやすくなることで、職場の選択肢が増える。そうしたことを広げていけば、延長上には子どもを産み育てやすい職場の選択肢が増えてくるのではないか。これは、我々自身がやってみて発見した部分でもあります。

会場にはキッズデザイン協議会の会員企業が集まり、トークセッションに耳を傾けた
会場にはキッズデザイン協議会の会員企業が集まり、トークセッションに耳を傾けた