子どもの安心・安全と健やかな成長に役立つ優れた製品、空間、サービスなどを3つの部門に分けて顕彰するキッズデザイン賞。11回目を迎えた昨年は298点が受賞し、その中から34点が最優秀賞、優秀賞、特別賞などの優秀作品に選ばれました。その中から、日経DUAL編集部が注目した4作品を紹介。キッズデザイン賞の意義や今後の可能性について話し合われたパネルトークとともに、3回にわたってお届けします。

【キッズデザイン賞 特集】
(1) 「第11回キッズデザイン賞」受賞作品リポート 第1弾 ←今回はココ
(2) 「第11回キッズデザイン賞」受賞作品リポート 第2弾
(3) デザインの力で「子どもは社会の宝」を実現する

LINEや電話を使い、自宅から小児科医に医療相談

 「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」部門で優秀賞に当たる経済産業大臣賞を受賞したのが、Kids Publicが運営する「小児科オンライン」。電話もしくはスマホアプリのLINEを使って、小児科医に医療相談ができるサービスだ。受付時間は平日の18~22時。メッセージ、音声通話、動画通話のいずれか好きな方法で小児科医に一対一で相談ができる。キッズデザイン賞では「ネットワーク時代の新たな子育て情報インフラ構築の取り組み」として高い評価を得た。

子育て世帯が孤立し、気軽に悩みを相談できる人がいない

 サービス開始は2016年5月末。きっかけは、代表を務める小児科医の橋本直也さんが「軽症による外来の受診が増えている」と感じたことだった。「以前であれば周りに相談する人がいて解消できた小さな不安も、核家族化が進んで子育て環境が孤立しているため、一人で抱え込んでしまう。さらに、情報を得ようとインターネットで調べてみたら、いろんなことが書いてあってますます不安になるんです」(橋本さん)

 「夕方、急に熱を出した」「うんちが出にくい」「発達が遅れているのでは」…。心配事が芽生えるたびに病院を訪れるのは親にとっても負担が大きいもの。共働き家庭であれば、日中病院に連れていくことはなおさら大変だ。そこで、多くのクリニックの診察が終わってしまい、不安が大きくなりやすい夕方以降の時間帯にスマホを活用したオンラインの相談窓口を開設することにした。

 会員制のサービスで、個人での登録も可能だが、現状は99%が法人会員。これは「福利厚生として会社に契約してもらい、各家庭は無料でサービスが受けられるようにしたい」という橋本さんの狙いに沿った形だ。利用に当たってはあらかじめ日時を予約する必要があるが、最短で15分前まで受け付けているので、急な相談にも応じてもらえる。

 ネットワークの先で対応するのは約30人の現役小児科医。受付時間内は当番の医師が常に待機している。オンラインという場所の制約がないスタイルは利用者だけでなく医師の参画機会も広げていて、中には育休中や留学先の海外から対応している医師もいるという。