百日ぜき 特に生後3カ月までの赤ちゃんは用心

 百日ぜきというと昔の病気と感じるかもしれませんが、実は現在も猛威を振るっているのだといいます。

 「百日ぜきの罹患者数は2018年はおよそ1万2000人でしたが、今年はすでにそれを上回るペースとなっています。百日ぜきは生後6カ月未満の子どもがかかると重症化しやすく、特にまだワクチン接種をしていない生後3カ月未満の乳児と、ワクチンの免疫がほぼ消失している小学校高学年ぐらいの子どもたちに注意が必要です。

 生後3カ月から四種混合(破傷風、ジフテリア、百日ぜき、ポリオ)ワクチンの接種を受けられます。しかし3カ月未満の乳児はほとんど免疫がありません。そのためもし百日ぜきに感染すると、せきが続いて息が吸えなくなり窒息する恐れがあります。他に、肺炎を合併したりして死亡するケースもあります。抗生剤による治療が行われますが、せきは菌が生産した毒素が原因なので菌がいなくなっても症状は続きます。完治まで長い場合には2~3カ月くらいかかることもあります。

 また乳児期に受けたワクチンの効果は、小学校高学年ぐらいにはなくなっていますから、高学年の子どもたちの罹患率が非常に高くなっています。高学年の子どもたちは百日ぜきで命を落とすことはありませんが、生後まもない乳児がいると百日ぜきを移してしまうことになりかねません。家庭内での感染に気をつける必要があります

 子どもを守るにはどうすればいいのでしょうか。

 「対策としては、ワクチンしかありません。追加接種の場合、百日ぜきのみのワクチンはなく、三種混合(百日ぜき、破傷風、ジフテリア)ワクチンを接種します。ワクチンのポイントは2つあります1つは、お母さん自身が、おなかの中に赤ちゃんがいるときに受けることです。胎盤を通して赤ちゃんに免疫が備わります。接種時期としては、27週から36週までに受けるのがよいとされています。ワクチンを受けても、赤ちゃんには影響はありませんから安心してください。

 2つ目は、赤ちゃんが生まれる前に、小学校高学年以上のきょうだいや、父、祖父母がワクチンを受けることです」。赤ちゃんが生まれる前に、家族で百日ぜきワクチンを受けておくことが幼い子どもを守ることにつながります。

 ワクチン接種だけでなく、「生後3カ月未満の赤ちゃんはなるべく人混みに連れて行かないことも大切です」といいます。帰省やレジャーの移動は、できるだけ混雑する時間帯を避けることも考えましょう

はしか 全世界で流行中。必ずワクチンの接種を

 全世界で今、はしかが猛威を振るっているのだといいます。EU圏では前年比300%を記録、米国ではニューヨークやカリフォルニア州を中心に流行しています。ワクチンがあるにもかかわらず、なぜ流行しているのでしょうか。

 「ワクチン接種を忌避する人が一定数いることで流行が繰り返されています。流行していない時にはワクチンを打たないという選択をする人が増えます。その割合が一定に達すると集団での免疫力が低下してはしかの流行が起きます。ワクチンの接種を忌避するのは間違った選択ということになります」と久住さんは言います。

 「日本ではあまり流行していないから、ワクチン接種をする必要がないのでは? と考える人もいますが、日本のはしかワクチン接種率は流行を阻止できるレベルには達していません。海外との人の行き来が激しくなると、いつ国内で流行が起こらないとも限りません。どこからかウイルスが持ち込まれたら、はしかの集団感染が起こりえるということです」

 はしかを発症すると、どんな症状が表れるのでしょうか。

 「8~12日の潜伏期を過ぎると、38度前後の発熱とともに、せきや鼻水、くしゃみなどが起きます。口の中の粘膜に白い斑点が現れるのが特徴です。その後、一旦熱は下がります。再び39~40度台の高熱が出て、体に発疹が現れます。発疹が現れてから3~4日で熱は下がります。最近の研究で、はしかにかかると、それまでに体が得たさまざまな感染症に対する免疫=抵抗力が失われることが分かっています。とても恐ろしいことです。

 主な合併症は中耳炎と肺炎で、1000人に1人程度の割合で脳炎を併発することもあります。はしかによる死亡原因は、肺炎と脳炎ですので、はしか自体にかからないよう、ワクチンで予防することが大切です。反ワクチン派の人たちは、『はしかのワクチンを接種するとはしかを発症する、自閉症になる』と言いますが、全くそんなことはありません。間違った知識に踊らされず、お子さんを守るためにもワクチンの接種をお願いします」