新型コロナウイルスによる休校期間中に「夜更かしが習慣になってしまい、生活のリズムが乱れてしまった」という子どもたちがいた一方で、「睡眠時間が増えて体調が良くなった」という子どもたちもいました。子どもが良い眠りを得るためにはどういったことに気を付けたらいいのか、新学期が始まったばかりのタイミングで改めて確認してみましょう。 ゲームや食事と睡眠の関係について、子どもの睡眠の大切さを伝える活動をしている東京ベイ・浦安市川医療センターCEOの神山潤さんに聞きました。

子どもたちが眠りの大切さに気づいた

 習い事や塾通いなどで現代の小学生は忙しく、生活は夜型となる傾向にあります。文部科学省が全国の公立小の5、6年生と中高生、計2万3139人を対象に行った大規模調査「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」(2014年)によると、小学生では午後9時から10時までに就寝しているという回答が41.4%と最も多く、次いで午後10時から11時までが36.2%、午後9時より前は7.8%でした。睡眠の評価については、「十分ではない」と回答した小学生は14.9%でしたが、中学生では24.8%、高校生は31.5%で、学年が上がるにつれて寝不足を感じている子どもが増加しました(※1)。

 新型コロナによる休校では、そうした子どもの睡眠に変化があったようです。神山さんは、「コロナの流行で家にいる時間が長くなった結果、睡眠時間が増えたという欧米などからの報告があります。日本でも同様の傾向を聞きます。これは、コロナ禍で得たものの一つといえます。私のところでも、子どもたちからの『よく眠れるようになった』『睡眠時間をたくさんとって体調が良くなった』という声が聞かれました」と話します。

 そもそも、子どもにとっての必要な睡眠時間とはどれくらいなのでしょうか。

 「個人差が大きく、8時間眠れば十分な子がいる一方で、10時間必要な子もいます。睡眠時間が足りているかどうかの見極めポイントは『授業中に眠気を感じていないかどうか』です。もし子どもが昼間に眠気を感じるようなら足りていないのかもしれません。短時間でも眠りの質を高めればいいと言う人もいますが、睡眠の質とはいったいどういった要件で定義されるのかについて、実はほとんど何も分かっていません。眠気を手掛かりに適切な睡眠時間を探してもらいたいと思います」

 前述の文科省の調査では、小中高生とも、携帯電話やスマホを使ってメールやインターネットをする時間が長いと就寝時間が遅くなる傾向がありました。1時間未満しか使わない小学生は午前0時以降に就寝する割合が3.3%でしたが、「2時間以上3時間未満」では17.1%と開きが大きかったのです。

 ぐっすり眠れるようになった子どもがいる一方で、コロナ休校中や夏休み期間にスマホや携帯、ゲーム時間が増えた子もいます。デジタル機器に触れる時間の増加は子どもの生活リズムにどのような影響を与えるのでしょうか