今年は慣れない日常への疲れやストレスから「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」を発症する大人が増えているようです。治療開始が遅れると、ピリピリとした不快な痛みが後遺症として残ってしまうこともあります。そして、定期接種前の赤ちゃんに水ぼうそう(水痘)を感染させてしまうことがあり、注意が必要です。どうケアと予防をしたらいいのか、巣鴨さくらなみき皮膚科院長・鈴木さやかさんに、お話を聞きました。

痛みに続いて赤いブツブツが増えてきたら、すぐに皮膚科へ

 「新型コロナウイルス感染症の流行が山場を迎えた3月頃から、帯状疱疹の患者が増加しました。感染症対策で気を張っていたり、休校や休園、慣れないテレワークなどでストレスにさらされたりした結果、帯状疱疹を発症する人が増えたのではないでしょうか。また、自身の体調変化に敏感になり、気付きやすくなった面もあると思います」と巣鴨さくらなみき皮膚科院長・鈴木さやかさんは指摘します。

 「帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)により発症します。子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスは、治ったあとも体の中の神経節という場所に潜んでいて、加齢や疲れ、ストレスなどにより抵抗力が落ちると再び活動・増殖を始めます。体の中で息を潜めていたウイルスが、体が弱ると覚醒して再び悪さをするイメージです。帯状疱疹は免疫力の低下する50代くらいから発症率が高くなりますが、今年は20~40代の若い世代でも発症する人が多くみられました。20~30代でも重症化している人が多い印象です」

水ぼうそうと帯状疱疹の関係は下の図のとおりです。

子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスは、治ったあとも体の中に滞留。加齢や疲れ、ストレスで抵抗力が落ちると再び活動・増殖を始める(取材をもとに日経DUALで作成)
子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスは、治ったあとも体の中に滞留。加齢や疲れ、ストレスで抵抗力が落ちると再び活動・増殖を始める(取材をもとに日経DUALで作成)

 虫刺されと間違うケースが多いですが、どのように見分けたらいいでしょうか。

 「体の左右どちらかの一部に、最初はピリピリとした針を刺すような痛み、かゆみや違和感が現れ、その痛みがある部分に赤いブツブツとした発疹が出てきます。斑点は次第に増えていき、やがて帯状にならんだ水ぶくれ(疱疹)になります。現れる部位として多いのは顔や胸部ですが、腕、尻、下肢などに発症することもあります。

帯状疱疹のイメージ
帯状疱疹のイメージ
帯状疱疹の特徴
□はじめに体の一部にピリピリじくじくとした神経痛のような痛みや違和感が出る
 (いきなり赤い斑点が現れるケースも)
□その場所に赤い斑点(ブツブツ)が増えてくる
□体の左右、片側の一部だけにできている

 「虫に刺されたのかなと思って市販の塗り薬などで様子をみていると、治るどころか患部が拡がっていき、重症化するリスクが高くなります。発疹が出てくれば抗原検査で帯状疱疹かどうかを調べることもできますので、1日でも早く皮膚科を受診してください」

 次のページでは、親が帯状疱疹にかかったときに、子どもに対して気を付けることなどをご紹介します。