近年、子どもの近視がとても増えています。裸眼視力が1.0未満の子の割合は小学校で32.46%、中学校では56.33%で過去最高となっており、幼稚園児でも24.48%が1.0以下という結果になっています「学校保健統計調査」(文部科学省・平成29年度)。

 実は最近、日常生活生活のちょっとした取り組みで、子どもの近視が予防できることが分かってきました。どのようなことをすればいいのか、はんがい眼科院長・板谷正紀先生に詳しく話を聞きました。

目玉の奥行きが伸び過ぎると近視に

 近視予防の話題に入る前に、少しだけ近視のしくみについてご紹介します。

 「近視とは目に入ってきた光が網膜の手前で像を結んでしまい、遠くの物がはっきり見えない状態の目のことです。目玉の奥行きのことを眼軸長(がんじくちょう)といいますが、眼軸長が正常より長く成長し過ぎると、網膜の手前で像が結ばれてしまいます。これを“軸性近視(じくせいきんし)”といいます。子どもの近視のほとんどは、この軸性近視とされています。

 人の目は、完成した状態で生まれてくるわけでなく、成長の余地(環境に適応する余地)を残して生まれてきます。生まれた時の眼軸長は短めで、人は誰しも遠視の状態で生まれてきます。その後、いろいろなものを見ているうち眼軸長がどんどん伸びていきます、その結果遠視が減り正視に近づきます。しかし、正視の状態で目の成長が止まればいいのですが、近くのものばかり見る生活をしていると、過度に眼軸長が伸びてしまいます。すると近視になります。

 つまり、近視とは目玉の奥行きが成長し過ぎる(眼軸長が伸び過ぎる)状態を言うのです。現代の生活は、遠くを見る機会が少なく、近くのものばかりを見ているので、そうした生活に適応しようとして近視になってしまうのです」(板谷院長)

 最新の研究では、近視は遺伝的背景と8~15歳ぐらいまでに近くのものばかり見ていることが大きく影響していることが分かってきたそうです。

 「近視のなりやすさには、家族歴も影響するとされていて、両親、あるいは片方の親のみが近視の場合には、両親が近視でない場合に比べて眼軸長が長くなりやすいとされています。実際、両親のうち一人が近視だと、子は2.7倍近視になりやすいことが分かっています。

 8~15歳というと、特に都会のお子さんは塾通いをしていたり、帰宅後にも遊ぶ場所がないため家の中でゲームをしたりして過ごしがちです。しかしこれを仕方のないことだと諦めていると、特にご両親のどちらかでも近視の場合には、お子さんの目はどんどん奥に伸びて近視になってしまいます」

 遺伝的背景があったとしても、次のページでご紹介することに取り組んでもらうと、お子さんの近視は予防できるかもしれません