小学校入学に当たって共働き家庭がぶつかるという「小1の壁」。近年よく聞かれるようになりましたが、それがどんなものなのかいまいちよく分かっていない……。そんな保育園児の子を持つママ、パパは少なくないのではないでしょうか?

 保育園の待機児童問題が社会問題化し、自治体も危機感を持って取り組み始めた一方、学童保育の問題はまだそこまで注目を集めていません。この特集では、今深刻化する「小1の壁」とは一体何なのか、そしてわが子がこれから小学校に上がっていくという共働き家庭が準備や練習しておいたほうがいいことなどについて明らかにしていきます。

 第2回では、学童保育の置かれた現状と課題や見学時のチェックポイント、キャリアについてどう考えればいいのかのヒント、そして入学前にやっておくべきことの具体的な内容を専門家に聞きました。

【親のキャリア、学童、防犯… 「小1の壁」の乗り越え方特集】
(1) 「小1の壁」は住む街で違う? 自治体「学童」調査一覧
(2) 年長の春から早めに準備 学童の見学とTO DO ←今回はココ
(3) 入学後の壁と「年長春→小1夏」スケジュール&準備
(4) 小1の防犯対策 子どもは不審者を見分けられない
(5) 「学童の壁」 事前の備えと指導員との情報共有が鍵

学童保育の入所希望者数と施設数がミスマッチに

 保育園の待機児童問題は、まだ解決とはいかないまでも、その問題自体は社会で共有されています。しかし、保育園児も数年たてば当然、小学生となります。そのときの預け先は学童保育が主体となるわけですが、現時点でその受け入れ態勢が十分に整っているとはとても言えません。保育園の待機児童問題の先にあるのは学童保育の待機児童問題であり、さらにそこでの保育の質が今問題となっています。

 「共働き家庭が増え、学童保育への入所を希望する児童の数は年々増加していますが、そうした状況に、施設数が追い付いていないのが現状です」

 全国学童保育連絡協議会の佐藤愛子次長はこう話します。

 「学童保育への入所児童数は、1998年には約33.3万人でしたが、2018年には121.1万人と20年で約3.6倍に増加しました。一方で学童保育の施設数はというと、同じ20年間で9627施設から2万3315施設と約2.4倍に増えてはいるものの、入所児童数の伸びに比べると施設数の増加が追い付いていないことが分かります。

 こうした状況を受け、最近では学童保育に入れない待機児童に関心が集まり『小1の壁』といわれますが、学童保育にまつわる『小1の壁』はそれだけではありません。例えば、『待機児童はいません』という自治体では、厚生労働省が定めた『1支援の単位おおむね40名以下』の規模を超えた大きく上回る人数を受け入れていたり、文部科学省が実施している子どもたちの放課後の居場所事業である『放課後子供教室』と学童保育の役割の違いを理解しないまま一体化してしまったりしているところもあります。つまり、入所希望者数と施設数とのミスマッチを背景に、保育の『質』の確保が問題になっています

 質が担保されない学童保育では、通い続けることを苦痛に感じる子どももいるでしょう。親にとっては子の預かり先を失うことを意味しており、キャリアの危機に立たされることにもなりかねません。結果的に「親にとっての小1の壁」としてはね返ってきます。

 「学童保育には、専用の施設が用意され、そこに毎日固定のメンバーが通ってきて、それぞれの子どもの性格や家庭事情を把握した専任の職員が、日々適切に関わっていくというのが基本です。子どもたちは『昨日の続き、しよう!』『明日もあそぼうね!』という継続的な生活の中で、指導員の関わりに支えられながら、多くのことを体験しながら育っていきます。そんな子どもたちの姿や、指導員の支えに安心したり、励まされたりして、保護者は働き続けることができるのです。

 定員を超えた大勢の子どもが通う学童保育は、職員の目も一人ひとりには行き届かず、落ち着かない騒々しい空間になってしまいます。そうした状況ではけがをする可能性もあり、子どもが安心して過ごせる場とはいえません。また、学童保育に行った子どもがそこから放課後子供教室に遊びに行くのはいいのですが、根本の部分で学童保育と放課後子供教室が分けられておらず、『生活の場』を必要とする子どもと『学習・体験の場』として利用する子どもが混在してしまうと、一緒に放課後を過ごす仲間としての意識が形成しづらい。結果として、『○○ちゃんが今日は家に帰るみたいだから自分も帰りたい』など、通うべき子どもが継続して通うことが難しくなります

 4月時点のことだけでなく、その先も子どもがずっと安心して通い続けることができる場所であることが何より大切なことです。子どもが充実した学童保育に通うことは、親が就労していることを子どもが肯定的に捉えることにもつながるので、学童保育の選択は親子で十分に考えてもらいたいですね」(佐藤さん)

 そうなると親にとって必要になるのは、わが子が通う学童保育を見極めること。どういった点に注目すればいいのでしょうか?

<次のページからの内容>
● まずは自治体の窓口、HPをチェック、実際に見学も
● 子どもにとっての「小1の壁」、親にとっての「小1の壁」
● 「親の小1の壁」にぶつかったときは、早めに会社に相談を
● 年長の間に子どもの個性の芽生えを見つけよう
● 新年長ママ、パパ「TO DOリスト」