学童保育の実態は自治体ごとに異なる

 「小1の壁」と一言で言っても、その内容は多岐にわたることが分かります。中には、「時短勤務は会社の制度で継続できたけれど、学童保育に入れるか分からない」「体力面は心配ないがコミュニケーションが不安」など、すべての壁にぶつかるというわけではないけれど、どれかには当たってしまう、という人もいることでしょう。

 では、どうすればいいのでしょうか? それぞれの「壁」の対処については今後特集の中でご紹介していきますが、ここでは「小1の壁」のかなりの部分を占める「学童保育」について、「自治体によって運営実態が異なる」ことについてご説明しましょう。

 学童保育とは、法律上では「放課後児童クラブ」とされています。保護者が就労などによって日中に在宅していない家庭の小学生の児童に、小学校の授業終了後に適切な遊びの場、生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業のことです。

 放課後児童クラブを所管するのは厚生労働省ですが、文部科学省が所管する「放課後子ども教室」という事業もあります。放課後児童クラブが「生活の場」であるのに対して、放課後子ども教室は「学習・体験の場」。学童保育は専任の「放課後児童支援員」という専任の資格を持った指導員がいますが、放課後子ども教室は大学生や高齢者など地域人材が「教育活動サポーター」として見守ります。

 また利用時間も放課後児童クラブが18~19時くらいまでというところが多い一方、放課後子ども教室は17時くらいで終わることがほとんどです。

 この放課後児童クラブと放課後子ども教室については、2014年に政府が「放課後子ども総合プラン」を打ち出し、この二つを「一体的にまたは連携して」実施していくという方針を示しました。「一体型」とは、同じ小学校内などで二つの事業を実施し、放課後児童クラブを利用する子どもも、それぞれの興味・関心に合わせて放課後子ども教室に参加できるようにすることです。

 「自治体によっては、放課後児童クラブと放課後子ども教室の垣根をうやむやにし、『学童』と一言で言った場合にこのどちらを指すのか、分かりにくくしているところもあります。また一体化することで、本来守られるべき学童保育の定員の支援の単位1当たりおおむね40人以下、子ども1人当たりの広さ1.65平方メートル以上などといった基準も実質的に守られなくなってきています。つまり、『学童全入』とうたっている自治体の中では、定員も何もなく、ただ希望者をすべて受け入れているというだけのところも存在するのです

 学童保育の普及・発展を図り、国や自治体に施策の充実などを提言する「全国学童保育連絡協議会」事務局次長の佐藤愛子さんは、「一体化」についてこのように懸念します。

 施設を増やすわけでもなく、ただ子どもたちだけを無制限に受け入れる。そのような学童保育では、子どもがすし詰めにされ、指導員の目が行き届かないといった“質の劣化”が起きるのではないかと不安視されているのです。

 「学童保育は、大事な子どもたちが一日何時間も過ごす、大切な居場所です。夏休みになれば、丸一日過ごす場所にもなるわけです。そんな学童保育が子どもたちにとって居心地が悪く、安心して過ごすことができない空間であれば、子どもの健やかな成長など望むべくもありません。ただ入れればいい、というだけでなく、そこがどんな施設なのか、どんな指導員がいるのか、早い段階からいろいろチェックし、情報収集を始めたほうがいいと思います」(佐藤さん)

学童保育は大切なわが子が長い時間を過ごす、重要な場所
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