旧姓で働く妻が誇らしい! また一緒に暮らす日を楽しみに

―― もめることやけんかすることはなかったですか?

原口 もちろん娘を叱ることもありましたし、毎日が大変でイライラする事もありました。妻がいるときならば、私が多少叱りつけても娘はママに逃げるというようなこともできましたが、一人だとそうはいかない。

 1度、ちょっとしたことから本当に私が頭にきてしまって、怒鳴りつけ、娘が大泣きしていたことがあるのです。いつもはそこまでいかないのですが、そのときは私も気持ち的になかなか収まらなかった。でも、娘をサポートしてくれるママがいないと思うと、同情心と罪悪感で、何とか自分を持ち直すことができました。娘がかわいくて仕方ないというのももちろんありました。これが男の子だったらもっと厳しくしていたかもしれませんが、娘はかわいい(笑)。

 ママがいないからと頑張っていたこともあると思うので、毎日学校に送り出すときは必ずハグしたり、けんかしても「○○ちゃんがパパを好きじゃなくても、パパは大好きだよ」と伝えるようにしていました

―― そして1年が終わり、娘さんは今はママと二人暮らしなんですよね? 寂しくないですか?

原口 はい、娘は妻のところへ行ってしまいました。もちろん寂しいですが、二人きりの1年間は常に気を張っていたので、少しホッとしたところもあります。今は、仕事に専念し、食事もいい加減になってきてしまいました。娘は夏休み中は帰国し、また1カ月ほど一緒に過ごしますが、久しぶりすぎて一人で面倒を見ていた規律ある生活に戻れるか不安です。あの時期は、本当に特別でした

―― 母娘の二人海外暮らしをしている妻についてどう思われますか?

原口 彼女も慣れない土地で大変だと思いますよ。ベビーシッターを雇うようですが、彼女はとても責任ある業務についているので、仕事と子育ての両立はきっと大変でしょう。すごく頑張る人なので、子育てに時間を割けないとか、いろいろ罪悪感も抱えているんだと思います。

 でも、そんな彼女を遠くで見ながら、すごくキラキラしているのを感じています。いきいきしてるんです。彼女のやってきたことが生かせる現場で、彼女しかできないことをしている。大変だろうけど、本当にかっこいいと思うんです。頑張ってほしいと思う

 私は、彼女より1回り年上ですが、実はあまり甘やかしてあげるのは上手じゃないんです。もっと「休んでもいいよ」って言ってあげればいいのでしょうが、いきいきと働く彼女を見ていると、つい背中を押してしまう。彼女自身のために頑張ってほしいんです。

 妻は、仕事では旧姓を使っていますが、私はそれに大賛成です。彼女の名前にもうキャリアがついているんです。そのことに胸を張って働いてほしいと思いますし、実際に成果も出している。「かっこいいぞー!」って、日本からいつも思っているんです。

 2年後にまた家族一緒に過ごせる日まで、それぞれで頑張りつつ、お互いにサポートし合いたいと思っています。

取材・文/岩辺みどり